ボクは毎週舞台に立っている。好きなことをやって、好きなことで悩む毎日。楽しくて苦しくて楽しい。いつだってお客さんを満足させられていればこの上ない。でも不安は付き物で、努力が結果に伴わないことも多々ある。ゴールがないからどこに向かうか解らない道を必死に歩いている。自分の通りたい道が先にあることを信じて。
変なプライドが邪魔して自分をぶっ壊せなかった夜。ずっとしがみついていた手の力が弛んでいった。そんな日、ボクに手紙が届いた。ファンレターというやつだ。差出人の情報は下の名前だけ。小さなドット柄の封筒から、二つ折りにされた便箋が一枚、二枚、三枚、四枚…皿ではないのに、途中から不気味な声で枚数を数えていた。全部疎らな柄の便箋…八枚、九枚。たいしたことないボクにこれほど想いを溢れださせるひとがいるなんて驚きだ。
そして、もう一枚。封筒より少し小さいサイズのメモ用紙が同封されていた。
何度も手紙を書いたのに、今まで恥ずかしくてだせませんでした。でも勇気がでたので送ります。捨てられなかったので昔書いたのもいっしょに入れました。すみません。キモかったら読まなくていいです。
読むさ。なぜ便箋の柄に統一感がなかったのか納得できた。
ちょっと色褪せているものもある。たぶん他より古めの手紙だろう。まずはそれから読むことにした。やはり初々しい言葉で綴られている。ボクが尊敬する先輩から褒めてもらった日に立っていた舞台のことが書かれていた。だからこの一枚目は三年ぐらい前に書かれたもののようだ。落ち込んでいた差出人にボクは光を与えたらしい。がんばってください…がんばると当時もらっていたなら応えたにちがいない。ここに書かれているぼくも初々しかった。
二枚三枚読み進めていくと、差出人の心の変遷と共にボクの歴史も見えた。その当時のことが蘇ってくる。
この頃はなんだかんだ充実してたなぁとか、酒飲んで不安紛らわしてたなぁとか、偉いひとにこっぴどく叱られたなぁとか、一生これで食ってくって仲間と語ったなぁとか。波のあるボクに反して、差出人の応援の気持ちは少しずつ確実に強くなっていっているように感じた。よく見てくれている。
あなたがいるから、毎日がんばれます…こちらこそと応えていた。光をもらったのはボクのほうだ。
チャンスが途絶えたわけじゃない。朧気な希望をゼロにせず、明日からも前進するのみだ。着ぐるみに入ろうと、白塗りになろうと、照明が当たってなかろうと全力で満足させます。
しがみついて、も少しがんばる。主役になったボクを見せるから、このままついてこい。
ボクもまた渡せない手紙を書いた。