前方に駐車している黒いワゴン車のフロントに、苦痛に顔を歪めた婆さんが磁石のように貼り付いて、まるで静止画の様にピクリとも動かなかった。
なにこれ? と思って車から降りて、そのワゴン車に近づくと……。
いきなり婆さんの口からドボドボと血が吹き出し、「バンッ!」と大きな音と共に俺に向かって婆さんがブッ飛んで来た。
でも、ぶつからずに俺の身体をすり抜け、そして背後の方で「ドスッ」と地面に叩きつけられた音がして振り向くと姿も痕跡も無かった。
あの婆さんが貼り付いていた車のフロント部分をみたら何かに衝突してベコリと凹んだ跡があって嫌な想像をしてしまって怖くなった。
でも本当に怖かったのは、そのあと買い物をしていたら、さっきの婆さんを顔面に貼り付けた人とすれ違った事だった。
あの車の持ち主だと思う。