海外に出て仕事をしようという啓蒙活動のようですが、リクルートが流行らせようとしている感もあり(?)、実際に多くの人が関心を持っているかはよくわかりません。
私は、私自身が日本を出てシンガポールに職を求めてやってきた経緯があり、その結果人生が開けましたので、チャンスは日本だけでなく世界にあるという点では体現しています。
ボーダレスワーカー・ドットコム(http://www.borderlessworker.com/)、というサイトも主催しており、世界で活躍している日本人を始めとしたいろいろな人々を応援しています。
そういったことをふまえても、安易に日本を出て海外に挑戦するということは勧めません。
今までけっこうな人数の日本人にシンガポールでの仕事を紹介してきましたが、多くの人は平均して2年くらい働いて、それから日本に戻ったり他国へ移動したりしています。初志貫徹しどんどんポジションを上げて行ける人は少数です。若ければ「良い経験」という意味で問題ないと思いますが、ある程度の年齢になってしまいますと相当なハングリー精神を必要とします。(もちろん業界や職種にもよりますので、金融や個人に専門的な強みがある場合などは成功しやすいと思います。)
私がシンガポールに来たときは「駐在」と「現地採用」の違いも知らずに無知でしたので、それと比べれば情報が多い今の方が断然有利でしょう。多くの人に理解されやすく成功確率も高いかもしれません。しかしブーム的に煽って良いものかというと、そうは思いません。
海外での就職という選択肢は、元々閉じられていた訳ではなく、ただ単にあまり選ぶ人がいなかっただけです。日本は長らく優秀な学校を出る→一流企業入社→長く勤める、という成功モデルが幅をきかせていたため、駐在以外で外国に出て行くということは、「日本でレールに乗れなかった人」「語学力を重視しフットワークの軽い女性」「グローバルに通用する専門職」という層に偏っていました。私も全くレールに乗っていなかったから逆転を求めてやって来た訳ですし、事情はわかります。
では、日本での仕事を辞めて外国に来たら何が待っているのか?それは「仁義なき生存競争」です。日本という守られた社会から一歩外に踏み出せば、自分で自分の力を証明しなければなりません。容赦なく雇用も切られ、ブラックブラックな会社でもビザのために耐えなければいけない社会な訳です。実績がすべて、プロスポーツ選手と似たような環境です。現実と向き合う日々が続きカッコ良くも華やかでもありません。
今まで多くの日本人と外国で働くことについて話してきましたが、この仁義なき戦いに挑戦するつもりで就職活動をする人はおそらく1割に満たないでしょう。日本は発展している国だから仕方ありませんが・・。また就職者の多くが求めるのは、待遇とか保障とかそういうものです。外国で働く=契約社会だから、はじめにいかに有利な契約を結ぶか、に執着するのは多少わかります。本人・家族に不安も多いでしょう。
しかし「会社に自分の不安を解消してもらう」というのは、いかにも日本人的なダメな発想だと私は思います。数回の面接でお互いのことがすべてわかる訳がありません。エンジニアや手に職系の場合は目に見えるものがあるから良いですが、事務系ではほとんどお互いがわからないのですから、雇う側は1年後の雇用の保障だってしたくありません。待遇を先に大きく保障するのは逆に不平等です。結果が出て初めて自分の道が開けていく。その現実を受け入れられるかどうか。
結果的に本当に優秀な、日本でも引く手あまたな人材以外は、就職しても会社側から長期的に優遇される見込みは低いということです。そこにミスマッチを感じます。
海外で就職するというのは、タフで物好きな人だけがやれば良いと思います。例えるなら、「皆でプロ野球選手になろう!」という活動をしたとします。あなたはプロ野球選手のテストを受けに行くでしょうか?万が一合格したとして、毎日キツイ練習に耐えられますか?
または例えば「皆でマスコミに就職しよう」というキャンペーンを張って、皆がマスコミを受けに行くようになるとしても、受け入れられる人数は限られているし、多くの人が理想と現実の違いにガッカリするだけではないですか。

やっぱりそのことが好きな人でないと意味ないですよね。
日本のプロ野球のように、最近になってキューバから選手が来ることが解禁され、門が開かれたというような新しい事情があれば、マーケットとして注目しても良いでしょう。しかし海外での労働ビザ取得は、世界の趨勢として逆に厳しくなってきています。最後のチャンスとも言えますが、日本も景気改善により人不足だと聞いていますので、ひょっとしたら日本の方が今後チャンスは出てくるかもしれません。
海外で就職することを考えている人は、ブーム的な情報に踊らされず、国、タイミング、そして必要性について、しっかり考えて行動すべきだと思います。貧富の差が広がりつつあるこのご時世、無駄に人生の時間を使うのは得策ではありません。
それでも結論として出てきたいという人は、ぜひ日本のため世界のため、共にがんばりましょう

根が楽観的な人にはこの上なく充実した環境だと思いますよ。