我々はジョブズになれないのか? | シンガポール~熱帯先進国から見る世界

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最近、今更ながらスティーブ・ジョブズ(Steven Paul "Steve" Jobs)の本を読み漁っています。アップルの時価総額が一昨年に世界最高となりました。世の中には物を作ったり、石油を輸出したり、土地を所有したりしている企業は数多ありますが、その中で”Apple”という、言うなれば「企画」の会社が世界一になったというのが衝撃的でした。もちろん株式の評価額ですから、時価総額1位イコール世界最高の企業とは簡単には言えませんが、主に”頭から出てくるアイディア”を売りにした企業が世界一になるというのは今の時勢を象徴していると感じます。

私が生まれて初めて、いわゆる「パソコン」を親に買ってもらったのは1986年でした。小学生でありながら毎日のようにデパートのパソコン売場に入り浸って、やっと買ってもらったのです。当時はパソコンと言えばNEC、富士通、シャープというラインナップの中で、NECのパソコンを選択しました。アップルのマッキントッシュはまだ日本ではマイナーな存在で高価でした。特にファミコンが隆盛を迎える中で「ゲーム」をパソコンで遊ぶという目的では、マッキントッシュを買うという選択肢は皆無でした。パソコン自体が「マイコン」と呼ばれた新しい商品で、今のように誰でも持つ自体が来るとは夢にも思われていなかった時代です。
その後、メーカーごとに互換性のないマニアックなパソコンを作り続けていた中で、マイクロソフトがMS-DOS、そしてWindowsでこの世界の主導権を握り、ジョブズそしてアップルの復活という歴史を経る訳ですが、当時の私はそんな社会の未来について考えるほど大人でもなく、技術の進歩をただ「ユーザーとして」傍観していたのでした。

そしてiPod、iPhone、iPad・・と社会を変える存在となりAppleは2012年時価総額1位になった訳です。その間、約25年。私は子供のころからパソコンに慣れ親しんでいた癖に、全くそういった時代の流れを予測しても、関与してもいなかったのです。なんと盲目だったのでしょうか。もしタイムマシンで当時に戻れるなら、その道を極めるように自分を説得することでしょう。
このように、チャンスの芽は日常に転がっているものの、多くの人はその目に気づかないか、気づいても行動しないものです。過去については仕方がない、では未来についてはどうだろう?25年と言わず、向こう5年、10年でも大化けする分野はあるはずです。それはなんなのだろう、と考えてしまいます。

スティーブ・ジョブズも、ビルゲイツも、孫正義も、コンピューターが好きで、テクノロジーにわくわくして仕事をしていたに違いありません。彼らはお金や地位や名誉を、自分の大きな目的を達成するために使うことこそあれ、それ自体を目的にしてきたとは到底思えません。
Apple自体は「ジョブズ」のアイディアや行動に支えられた会社ですから、ひとりの人間の存在が、名だたる「実業」を営む会社を押しのけて1位になったというのは、それだけ世界が「Appleの登場で人々の生活が大きく変わった」と認めたことに他なりません。

うーん、これはすごいことです。ジョブズは皇族でも金持ちでも、資産家でもありませんでした。ジョブズは気性が激しかったり、冷たい人間だなどと言われることもありますが、もしジョブズがいなければ、私達がウォズアニックのことを知ることも、ジョン・スカリーがペプシのマーケティングをやっていた事なども知らずに一生を過ごしていたでしょうから、マイナスより大きなプラスを周囲に与えたことは疑いがありません。批判や誘惑をものともせず自分の道を突き進めるモチベーションは、金や名誉という物ではとうてい補えないでしょう。

1人の人間が世の中にどこまで影響を与えることが出来るのか、これは私達1人1人に平等に与えられた、壮大なロマンです。お金がない、家族がいる、時間がない、心配だ、いろいろな理由で私たちは自分の可能性に賭けることから容易に降りてしまう。
しかし、あきらめなければいけない理由はどこにもありません。今から真剣に取り組めば、道は違えど将来スティーブ・ジョブズになれるきっかけはあるはずです。

すべて当たり前のことですけど、皆さんのまわりはどうですか。前向きな話であふれていますか?私の周りは、そんな青臭い未来について語り合える相手は年と共にグッと減ってしまいました。だから最近、自分で自分をモチベートしています。

たとえどんなハードルがあっても最高の未来を作れるでしょう。そう、ジョブズならね…。