「うまく負ける」ことの重要性 | シンガポール~熱帯先進国から見る世界

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シンガポールで進出支援・会社設立・資産管理をお手伝いする代表者ブログ
常夏のシンガポールから、つれづれなるままにコラムをお届けしています

さて、前回は挑戦することの重要性に触れましたが、
個人が起業するにしても、企業が新規事業を始めるに
しても、今まで守っていた人が突然攻めに出るのは
簡単ではありません。

企業の新規事業進出や個人の起業に長く携わってきた
身として私が言えるのは、新しい分野に出ていって
意味のあるパターンは、大きく分けて次の2つに
なるかと思います。

1.時代の潮流に乗っている分野に進む(ブームに乗る)
2.今までやってきたことを生かせる分野を選ぶ


これはどちらが正解という訳ではなく、好みや方針で
決めていくものです。

まず考えなければいけないのは、自分が何者であるかを
知るということです。

思えば、自分が何をしたいのか、そして何ができるのかを
突き詰めて考える機会は、日常の中ではありません。
多くの人がそうであるように、学校を卒業して何となく
就職し、割り当てられた部署で上から与えられた業務を
やっているだけでは、
あるいは過去の成功パターンに沿って日々予定を埋めて
忙しくしているだけでは、
自分に何ができるのかを真に知ることはできません。

もともと日本の教育制度は、社会に出た後のことを
真剣に考える機会が不足しています。資格を必要と
するような専門性の高い仕事を除くと、自分に何が
適職であるかを知ることは簡単ではありません。
ですからまずは自分をしっかり分析し、得意・不得意
分野の棚卸しをします。企業であってもそれは同じで、
自社の現状とキャパシティを正しく知るということは、
新しい分野に踏み出す上で一番大事なことです。

少し脱線しますが、私がお手伝いさせて頂いている
日本の優秀な経営者の多くは、決して高学歴では
ありません。しかし若い頃に自分が何をなすべきかを
真剣に考えて実行し、その結果得意分野を作られた方が
多いのです。決められた人生のエスカレーターに乗らず
(あるいは乗れず)、真剣に自分と向き合った人が、
結果的に成功しているのではないかと考えています。

さて、次に大事なのはモチベーションです
新しいことを成し遂げようという強い意志がどれだけ
あるか。モチベーションこそが新しい分野を開拓し、
行動に移す源泉となります。
モチベーションは新しい分野に進んだ後もずっと
付き合っていく、大事なパートナーですから
その井戸を枯らさないように掘っておかないといけません

ここでよく間違えてしまうのは、まず自分を知った上で、
次にモチベーションと持ってくるべきところを、
新しいことをしたいというモチベーションを優先して、
自分を知るという作業を後回し(あるいは置き去り)に
してしまうことです。
これは傍から見ると無謀な賭けにしか見えません。
そして結局完遂できないので、まわりの人間を振り回して
終わってしまうことが多いのです。

新しいことに挑戦する際には、必ず自己分析を
先に行うことです。

自分自身を知り、モチベーションを確認し、そして
どのような分野に出ていくべきかが固まれば、
後は実行するのみとなります。


宋文洲さんがコラムで面白いことを書かれています。
それは「うまく負ける」ことの重要性です。
http://www.soubunshu.com/article/276465530.html
そもそもこの文章を書こうと思ったきっかけは
宋さんのコラムを読んだことでした。

シンガポールでは、お金をかけてオープンした飲食店が
わずか2,3か月でなくなることも珍しくありません。
日本的な感覚では、コストをかけた店を2か月程度で
閉めてしまっては、負債のみ残ってしまいますし、
また世間的・社内的にもダメージが大きいので
よっぽどのことがないと困難です。
しかし華僑の国であるシンガポールではたびたび
起きることです。

挑戦を良しとする人は、その分、撤退も躊躇なく
おこなうことができます。
日本ではどうでしょうか。
一度始めたことは途中であきらめてはいけない。
そして失敗するとまわりから非難され、資金も減って
しまって誰も助けてくれない。
そんな悲壮感漂う挑戦ストーリーが多い気がします。
それは前回書いたような、長年の気質から生まれる
感情でしょう。

失敗を想定しない挑戦はただのギャンブルです
新しい可能性に心を入れ込みながらも、頭の片隅には
失敗を想定した準備を怠らない。
それが、私がシンガポールで学んだ挑戦の方法です。
かくいう私も偉そうなことは言えず、いろいろと痛い目に
合ってきましたが、常に最悪のケースを想定することに
よってなんとか乗り越えることができました。

挑戦とは常に失敗を伴うもの。
その時に「うまく負ける」ことを知っていれば、
ダメージは最小限に抑えることができます。
日本人が挑戦を苦手とするのも、その負け方を
よく知らないからではないでしょうか

気張らずにうまく負けましょう。
その先にはより大きなチャンスが待っていると思います
にひひ