おはようございます。
久しぶりに、森 信三先生に戻りたいと思います。
森 信三著、修身教授録(到知出版社)より。

誰でも招来、何か一つ自分の得意とする方面に向かって、研究の歩みを進めるがよかろうと思うのです。

すべて人間というものは、その顔の違うように、その性質も違うものであり、またその性質の相違に基づいて、その受け持ちとするところも違うわけです。
そこで、自分の顔が他人と紛れることのないように、自分の特色とするところも、他の何人とも違う特殊のところが出てしかるべしでしょう。

もっとも人間は、自己の特色というものは、しいて特色を出そうとして出るものではありません。
すべて偉大なものは、自ら出来上がるものであって、あまりに早くからこせつきますと、大きな実りはできにくいものです。

人間、あまり早くから、ことさら何か特色を出そうとあせるのはよくないことで、とくに若い人などは、十分に広くして深い基礎的教養が大切でしょう。
「一人一研究」にしても、実はかような基礎的教養を背景として、初めて意味のあるものであって、もしかような基礎的教養を欠いて、ただ一つの問題にだけ頭を突込むというのでは、さして感心したこととも言えないでしょう。

もし諸君らにして自分の選んだ一、二の研究を、生涯貫いていったなら、諸君(小学校教員)らの研究といえども、ある意味では学会の一隅に、貢献し得るものとなり得るのです。
少なくとも教育界の一隅には、確実に貢献するものとなることでしょう。

一人の人間が、永い歳月にわたって明けても暮れても、常に心の底に持ちつづけて研究したことというものは、そこに一種独特の持ち味を生ずるものです。