おはようございます。
中村天風著、叡智のひびき(講談社)より。

~苦を楽しみに振りかえる事の出来ない人は、人のよろこびを吾が悦びに為し得ぬ人と同様でつまらない~

この世は娑婆(しゃば、苦しみが多く、忍耐すべき世界の意)でしょうか。
そう捉えるなら、物質本位の生活をして、価値のない人生観を持っているからです。

物質本位の生活では、満ち足りる、満足感を得ることが容易ではありません。
満足感を得ても、一時的のことが多いです。
そして物質本位の生活を送っている人には、いつも心の中に五欲(財、色、食、名、睡)という欲求情念のみが、絶えず炎々と燃えています。
その結果、第三者からみて幸福そうな暮らしでも、決してこれで十分だという満足感がありません。
人生を心の底から楽しく感じて活きることができないのです。

人間というものは、楽しみを心が感じる程度が低調になると、「苦」を感じる感応度が増してきます。
そうすると気づかぬうちに、いつも人生のすべてのことを「苦しみ」の方面から看てしまうことになります。

いかなる場合にも、明るく、朗らか(ほがらか、心のはればれとしたさま)に、活き活きと、勇ましく、活きましょう。
「おもしろき 事もなき世を おもしろく すみなすものは こころなりける」と古人が詠みました。
「苦」もなおかつ楽しみに振り替えて活きようではありませんか。

そして、人の悦びを自分の悦びのように感じましょう。
それは、価値あるすばらしい活き方です。
自分だけの悦びなどは、そうしばしばあるものではないのですから。

再び生まれ能(あた)わざる人生と知るなら、真人として活きなければです。
「ふたたびは 来たらぬものを きょうの日は ただ ほがらかに すごして たのし」

大偈(たいげ、大いなるさとり)の欣喜(きんき、大喜びすること)生活を送りましょう。