「アイーダ」は日本でもわりと上演機会のあるオペラですが、これほどの傑作でも中々順番が回って来なくて、これまで実演では2回しか聴いたことがありません。今回リッカルド・ムーティが東京・春・音楽祭でアイーダを指揮するというので、4月17日に東京文化会館に行ってきました。若手の音楽家を主体にした教育的なプログラム(イタリア・オペラ・アカデミー・イン・東京の第3弾)で、演奏会形式での上演です。

 

アイーダはサッカーでもおなじみの第2幕の凱旋の場面が有名で、オペラでの上演でもここは特にお金をかけてド派手な演出をすることがあります。ムーティは音楽を雰囲気まかせで持っていこうとせず、合唱の発音・発声はあくまでクリアに、演奏するのが難しそうなフレーズであればあるほどリズムを明快に、くっきりと形が感じられるような楷書タイプの演奏を要求するので、この第2幕の「それ行け!」と思う箇所でもこちらの期待どおりにはなかなか音楽が飛翔せず、いいんだけどなんか物足りない気がしていました。

 

しかし、アイーダのドラマとしての見どころ聞きどころは第3幕と第4幕です。ラダメスが祖国を裏切ってしまう時の緊迫感、それまでイヤな奴でしかなかったアムネリスがラダメスを助けたいと心から願う場面は、数あるヴェルディの曲の中でも屈指の傑作で、ここがまさにムーティの本領発揮でした。

 

歌手の中ではアムネリスを歌ったユリア・マトーチュキナがともかく圧倒的に素晴らしくて、名前をしっかり覚えました。2015年のチャイコフスキー国際コンクールで1位を受賞したというので、まだまだこれから聴くチャンスがあると思います。

 

いやあ、アイーダって本当に素晴らしい曲ですね。ますます好きになりました。

 

そして、なんと今年の9月にイタリア・オペラ・アカデミー・イン・東京の第4弾として「アッティラ」の公演があるそうです。9月3日~16日とまだ公演日ははっきりしませんが、この辺りはチョン・ミョンフン指揮東京フィルの「マクベス」やN響定期などもあるので、詳細発表が待ちきれません。