米朝首脳会談の目的【非核化の現実性】拉致問題に固執するな!金正恩/北朝鮮/分析!トランプ大統領 | 和み雪 降る夜 

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米朝首脳会談の目的

 

 今回の「米朝首脳会談」の共同声明文に、不可逆的な非核化が明記されていない点や、非核化の具体的なプロセスがあいまいな点、および拉致問題に言及されていない点に不満の声がある。そこで、そもそも「米朝首脳会談の目的が何なのか?」を、アメリカ、北朝鮮、韓国、そして日本の立場の視点から、私なりに述べたいと思う。

 

拉致問題に固執してはならない

 安倍首相がやたらと拉致問題!拉致問題!と掲げるものだから、多くの国民が拉致問題が重要であるように錯覚するが、日本の国益にとって本当に大切なのは拉致問題の解決ではなく、「北朝鮮と国交窓口を作っていくこと」である。その窓口さえ作れば、国防においても交渉が可能であり貿易も実現する。そうすればおのずと講和への道が繋がる。そこを勘違いして拉致問題の解決に固執すると、今後の交渉においても北朝鮮に対して優位に立つことが出来ない。北朝鮮は拉致問題は解決したとみなしているため、拉致問題に固執すれば、当然にして足元を見られて、莫大な金銭を日本政府が払わされるだけでなく、金を払って北朝鮮に返還を頼む形になる。すると交渉の優位性は北朝鮮となる。交渉事は、どちらが優位に立つかが非常に大切で、日本が拉致問題にこだわる限り、日本は絶対に優位に立つことが出来ないのだ。

 

 拉致被害者の家族には申し訳ないが、要求を欲張れば何一つ叶わない。それが現実的なのに、なぜか安倍政権はその発言をしない。韓国は日本より圧倒的に拉致被害者が多いのに、先日行われた南北首脳会談において、韓国は自国の拉致問題の解決には言及しなかった。まずは南北国交を回復する事に目的を絞ったためである。かつての朝鮮戦争で朝鮮半島は焦土と化した。思い入れが韓国と日本とでは違う。しかし北朝鮮は、日本にとっても北朝鮮は近隣諸国なので、平和な関係でいるためにも、北朝鮮との交渉窓口を作ることは要となる。

 

ようやく「圧力作戦終了」

 今回の米朝首脳会談が終了した第一印象は、”やっと圧力作戦が終了したか”であった。日本がアメリカから任されていた「北朝鮮へ圧力」という役回りは、実は一番損をする役割で、北朝鮮にしてみれば日本の印象は悪くなるだろうし、そうすれば拉致問題の解決は遠ざかる。おまけに「アメリカの奴隷」という自立国家としての日本の情けなさが露呈し、アメリカ奴隷としての日本を強く印象付けることになった。トランプ大統領が「北朝鮮に圧力を」と言えば、日本はなりふり構わず圧力作戦を実行し「北朝鮮が圧力に屈して、我が国に会談を申し込んでくるところまで追い込む!」と国会で豪語する。そうかと思えば、トランプ大統領が対話路線に転じれば、「日本としても日朝首脳会談に意欲的に取り込む」と意気込んだりもする。もう、外交に関する安倍首相の意見は「私はアメリカ大統領の意見と同じです。」と、まとめて言っておけば?と思う。

 

完全なる非核化/立場の違い

 国連的には北朝鮮の核保有は認めない立場のため、日本政府としても北朝鮮の核実験を批判する立場をとっているが、そもそも日本が北朝鮮の核保有を非難するのは、アメリカへの右へならえ(忖度)だ。北朝鮮がミサイル実験をしていた時期も、ミサイルが日本列島に落ちるのではないか?と政府は日本国民を脅し、北朝鮮の核保有を非難することで、安倍政権が都合よく北朝鮮を利用してきた経緯もある。冷静に考えてみれば、実際に日本列島にミサイルが落ちたことは一度もないし、そもそも北朝鮮の核保有は対アメリカ用である。地政学的にも近く、しかも在日朝鮮人が多く暮らす日本に対して、北朝鮮が核を打つはずがない。つまり政府の印象操作が行われていたのだろう。

 

 とはいえ、核は誰がどう考えても危険であり、核戦争が起きれば世界は終わると言うことは多くの人が知っていること、核開発に民衆が批判的になるのは当たり前である。

 

 だが、北朝鮮の立場に立ってみれば、実は北朝鮮はアメリカと「休戦中」である。休戦と言うのは終戦ではないので、現在も戦争をしている最中を意味している。1950年の朝鮮戦争で戦ったのは、北朝鮮と韓国ではなく、実際には北朝鮮とアメリカ(米軍を主体とする連合軍)だ。その3年後、休戦宣言までの間に激しい戦争で朝鮮半島は焦土と化したが、北朝鮮とアメリカは今も平和条約を結んでいない。そのため、北朝鮮がアメリカを相手に核ミサイル開発をしていた事情も、なんとなく理解できるはずだ。北朝鮮は核武装することで自国の国家体制を維持してきた国だ。国家体制を守るため、厳しい姿勢を貫いてきた。何の問題もない平和な国が核開発しているのはないことを理解しなければ、北朝鮮の立場には立てないだろう。もし北朝鮮に対して非核化を求めるのであれば、北朝鮮の立場からすれば「朝鮮戦争の終戦協定」及び「アメリカとの平和条約」が先に必要なのだ。立場を考えれば、その理由が見えてくる。

 

 逆にアメリカの立場に立ってみれば、終戦協定を結ぶためには北朝鮮と韓国の意志(終戦宣言)だけではなく、アメリカ(連合軍として)、中国(北朝鮮軍を支援していた)が関与してくる。アメリカにしても、3分の2の連邦上院議員が賛成することで批准される必要が出てくる。そのために平和協定を批准するためには、『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』が必要だと言う理屈になってくるのだ。勿論、アメリカの本音は、「北朝鮮への恐れ」が一番の理由にある。なんとか北朝鮮の核を手放させたい。だからこそ、最後の切り札である「朝鮮戦争の終戦協定」という手段を、簡単には使いたくないのである。その意味で、実はアメリカにとっての利益は、韓国や北朝鮮との利益とは一致していないのである。

 

 立場の違いを理解する事が、政治には重要である。日本の報道はアメリカ立場である。しかし本質を知るには、アメリカだけではなく、そのほかの国家の相手の立場を理解しなければ正確な分析は出来ない。

 

トランプ大統領の狙い(サプライズ映像)

 特に韓国や北朝鮮にとって、終戦宣言や平和条約が行われるのではないか?と大きな期待があっただろうと思われる。その結果に至らなかったことに落胆しても仕方が無い。しかしながら、この米朝首脳会談は世界平和にとっては大きな一歩である。友好的な外枠を作れただけでも前進である。

 

 アメリカにとってはどうだろうか?米朝首脳会談トランプ大統領の記者会見が行われた会場(カペラホテル)で流れた映像は、非常に象徴的であったように思う。”過去にとらわれない平和が今この瞬間から始まる”というような、世界平和を演出するような映像で、まるで平壌オリンピックの閉会式で流れた映像を思い出すかのようであり、完成度も高く気合の入った映像だった。その映像の中で、トランプ大統領、金正恩党委員長、文在寅大統領が、平和の英雄のように演出されており、南北会談の韓国と北朝鮮の首脳同士が38度線上で握手するシーンが流れ、世界の国旗が青空に舞い、地球から朝日が昇る光り輝く映像などが盛り込まれており、その映像が朝鮮語と英語でそれぞ1回ずつ流れ、政府関係者や記者達がそれを食い入るように見ていた。この映像を見た時、韓国のクリエイターが作った映像だと感じたのだが、実はこの映像、アメリカの映画製作会社が作ったものだと後から分かった。つまり、トランプ大統領のサプライズだったのだ。そしてこの映像を、金正恩にプレゼントしたのだと言う…。

 

 この映像には、ミサイル発射の逆再生映像が混じっており、それを北朝鮮がどう受け取るのか?に非常に興味がある。平和的な映像であるが、ある種の北朝鮮への念押し(ミサイル実験はやるな)でもあり、今回の米朝首脳会談を茶番にするなと北朝鮮に釘を刺すようなメッセージが込められているようにも感じる。この映像が流れた会場で、さっそうとトランプ大統領が登場して記者会見を行われると言う演出が、最初から計算されていたことに驚きを感じる。もし、何の成果もない結果であれば会場は白けるだろうから、共同声明文のサインすら、最初から計画されていたと読み取れる。仮に共同声明に終戦宣言や平和条約が含まれていなかったとしても、まるで大きな前進であるような演出にも一役買っているし、朝鮮半島の平和的な映像は、間違いなく韓国へのご機嫌取りにもなるだろう。何よりも、大統領の頭の中は選挙のための点数稼ぎという大きな目的もある。”何かをした””自分が仕切っている”と印象付けたかったのだろう。

 

 アメリカ国民の一部には、北朝鮮とアメリカが対等であるかのような演出に怒りを感じたと聞いたが、必ずしもそんなことはない。そう見せかけて北朝鮮に油断をさせている(あるいは安心させている)演出であり、実際はアメリカ側にかなり姑息な計算があったように感じる。終戦宣言や平和条約が行われない上、味気ない形式だけの米朝首脳会談として終わるよりは、トランプ大統領によるサプライズや演出があったおかげで、それなりの温度が発生したのは事実である。実際に、金正恩も面食らった部分もあったのではないか?

 

緊張していた金正恩

 南北首脳会談のハイライトシーンをまるで意識したかのような似た構成の米朝首脳会談であったが、最も印象的だったのは、緊張した金正恩党委員長の緊張した表情だった。時折は社交上の笑顔を見せても、すぐに固い真顔に戻ってしまう。それが非常に気になった。プレッシャーもあるのだろうが、おそらく会談が、金正恩が想像していたものと少し違っていたからだと想像した。

 

 もちろん首脳会談の内容は、我々には知り得る事ではない。限られた報道内容から分析していくしかないのだが、一つはボルトン大統領補佐官が同席したこと。これは言うまでもなく、金正恩へプレッシャーをかける意図がある。ボルトン補佐官は、最後までリビア方式(アメリカを信じて悲劇な結末を迎える象徴)にこだわっていた強硬派で、会談直前まで金正恩から名指しで批判をされていた。ボルトンは、トランプ政権の中では安全保障問題ではトップであるが、トランプとも小さな衝突があったせいで、トランプから解雇されるのではないかと噂されていた人物だった。問題を起こしたボルトン補佐官をあえて出席させる事で、アメリカが有利に交渉を持って行ったと思われる。つまり強硬派のボルトン発言を、トランプが会談の中で制御してみせれば、アメリカ大統領としての威厳や力を見せつけることができるし、相手(金正恩)を信頼している演出に見せかけることも出来る。また、金正恩が何かを仕掛けてくれば、ボルトンは見抜いて誤魔化しは通用しないのだという無言の圧力もかけられる。そのために連れてきたボルトンを座らせることは、トランプにしてみれば大いに利用価値があるのだ。

 

 ボルトンを連れてきたことや、トランプが笑顔を見せなかったことも含めれば、金正恩を警戒し恐れて万全の作戦で臨んでいたのだろう。こうした仕込み自体が、腹を割って話すことや穏やかに語らう事、相手を信頼している事とはかけ離れている。それは金正恩からしたら心穏やかではない。この状況では形式的にならざるを得なかったのもやむを得ない。もしかしたら、会談が中止にならなかっただけ、まだマシだったのかもしれない…。

 

共同声明の評価

 共同声明の内容は強制力もなく、お互いの意見を確認し合った記録のようなものである。非核化に関しての記述は、先日の南北首脳会談と同様に、「朝鮮半島全体の非核化」への意志であり、トランプは「安全に関する保証を与える」と記載しているもの具体的な保証内容は無い。「米朝は、戦争捕虜・行方不明兵の遺体返還を進める。」について、一部の日本人が拉致被害者のことでは?と色めきだっていると聞いたが、そんな捉え方をしているのは日本くらいなもので、英文ではそのような記載になっていない。和訳の印象差である。唯一具体的なのは、「首脳会談の結果を実行するため、できるだけ早期にポンペオ米国務長官と北朝鮮高官による継続交渉を行う」という部分ぐらいだろうか。そもそも首脳会談の形式は、大まかな枠組みを作るだけで、細かい部分は外相交渉で進めていくものである。いくらトップダウン同士とはいえ、第一回目は顔合わせ程度でも良いとも言える。実際に顔を合わせて入り口を作っただけでも、平和にとっては意味がある。トランプの選挙用の功績としても、大いに役に立つだろう。

 

 世間の期待値が高い非核化についても、『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だとか精密に厳密に北朝鮮に要求すれば、限りなく不可能に近い。『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』を本気で期待している人たちは、頭がおかしいか、金正恩の暗殺を期待しているのか、北朝鮮が日本のようにアメリカに支配されることを望んでいるか、いずれかでしかないと思えてくる。それくらい、北朝鮮の体制保障しつつ『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』は、現実的には難しい。まず、北朝鮮には数百か所以上の核施設があると言われている。それらの施設を全て北朝鮮自身が正直に言うとは思えないし、もし一つでも核を隠していれば、『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』とは言えないのである。そこに固執すれば永遠に解決しない。どこかで折り合いをつけて、北朝鮮を信じるしか方法が無いのである。そうでなければ、いつまでも終戦協定が実現しない。

 

 そもそも北朝鮮とアメリカが休戦中にもかかわらず、片方は核を保有しておきながら、片方には核を手放せ、と言う理論が歪である。日本の報道において、北朝鮮を憎むようなバイアスがかかっているので、理解しにくいのかもしれないが、例えば、校則の厳しい学校の生徒が、服装身だしなみの派手な教師から服装身だしなみを注意をされた時、「なんで先生はいいの!?」と反発をされたとき、教師は何と答えるだろうか?「先生はいいの」とか「大人になってからね」と言っても生徒が納得しないとしたら?北朝鮮に対しても「オマエは核保有をするな」と言ったところで、北朝鮮の置かれている状況を考えれば納得しない。北朝鮮の体制を維持するために、多くの犠牲を払い部下にも厳しいルールを課してきている。その厳しさと犠牲を無駄にしないためにも簡単には核を手放すわけがない。国民に対する敬意でもある。それに見合うだけの納得する材料が必要なのである。相手の置かれた状況を理解しなければ、物事は前進しない。相手の置かれた状況を無視して押し付ければ暴力である。暴力とは、すなわち暗殺や戦争によって、他国に押し付ける事である。

 

日本と北朝鮮の会談の意味

 韓国の文在寅(ムンジェイン)が南北首脳会談を成功させ、中国の習近平は何度も金正恩と会談し、アメリカのトランプも米朝首脳会談を成功させ、ロシアも9月に金正恩の公式訪問を提案しているのだから、日本が焦るのは当然だろう。トランプ大統領からも、『最大限の圧力、この言葉はもう使わない。(北朝鮮と)友好的な交渉を行いたいと思っている』、との圧力作戦終了の合図が出たのだから、日本としても、いつまでも「圧力作戦」と言わずに、北朝鮮との国交正常化に向かうべきだろう。以前、私の記事【南北首脳会談の目的】で書いたように、この波(北朝鮮を国際的に自立した国家として認知する方向)に乗り遅れることは得ではない。現状の日本において、北朝鮮とのパイプが無いため、金正恩と外交をしたいと思っても直接窓口が無いため、アジアの近隣国にもかかわらず、北朝鮮と交渉をしたいことがあっても韓国や中国に頼るしか方法が無い。この状態を解決するためにも、やはり北朝鮮との窓口すなわち国交を築くことが優先なのである。従って、日本が日朝首脳会談に視野を向けてゆくのは大変に良い事である。

 

 しかし、今の安倍政権を見ていると、何でもかんでもアメリカの言いなりで、まるで自分の意志が無い。日本は自立国家ではないから仕方が無いのかもしれないが、そんな外交手腕で北朝鮮と外交交渉が出来るのか?と非常に不安である。

 

 日朝首脳会談に向けて歩むという事は、「北朝鮮を国際国家として認める方向に舵を切る事」と同義である。国交を回復させる、国交の窓口を作る事は、相手の国を受け入れるところから始まるからである。それが出来る政治家は、相手にペコペコするだけでなく、金を払うだけではなく、ある種の力量が必要であるが、残念ながら、安倍首相がやっていることは、ペコペコするか、金を支払うかでしかない。今、日本にとって絶好な経済チャンスなだけに、、、政治家レベルの低さが悔やまれる。

 

 

(米朝首脳会談の目的 by 雪華天)

2018年6月13日 

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