ホテルのロビー階は海に向かって大きく開け放たれていて、このオープンスタイルがのんびりと心も軽ろやかになります。スタッフの制服も白で南国の雰囲気を醸しだし、インドネシアあたりの高級避暑地にいる気分。部屋はすべてオーシャンビュー、家具は竹細工で統一されています。テラスにはくつろぎのチェアがおいてあって、抜群の眺望。でもちょっと寒いので長く外には出ていられないのが残念。
実は、夫に内緒で、ホテルにお願いしていたことがありました。二人ともワインに目がないものですから、珊瑚婚の記念にと、結婚した35年前に樽詰めされたワインを注文したのです。一生懸命探していただいて、ありました!1972年のビンテージものは日本に5本。そのなかでも一番の折り紙のついたものを確保してくださいました。感謝感激。そのワインに今夜、出会えると思うと、ちょうど初恋の彼に再会するようなときめき感です。
メインダイニング「ファヌアン」。予約席にいよいよ主役が登場です。「珊瑚婚おめでとうございます」。ソムリエが用意したワインを説明し、赤ん坊を扱うように慎重にコルクを抜く。「運ばれてくる間に澱(おり)が攪拌されて、まだ落ち着いていないかもしれませんので」と、ほんの少しグラスに注いで試飲。私たちは祈るような気持ちで見守っていましたが、「大丈夫です」とにっこり。
テイストで口に含むと・・・。もちろんこれまで味わったことがない、深い味。う~ん言葉や文字で表現することが難しい。強いていえば、35年間の喜びや感動、悲しみや怒り、まさに私たちと同じような人生の起伏が舌の上に広がり、のど元を通り過ぎていくような気がしました。35年の間封印され狭い空間で生き続け、ようやく今宵に解き放たれた喜び。「どうだい味は?」と語りかけてきます。えもいわれぬそのセクシーな香りとまろやかな味は、体に刻みこまれました。このときを待っていてくれた、出会いに感謝でした。
コース料理は花をイメージしたローズとセダクションと違えて注文しました。イタリア・フランスの3ツ星レストランに引けをとらない素晴らしさ。堪能し感動して涙しました。食べ歩きが仕事の私は、シェフの気が乗ったおいしい料理に涙がでるのは年に数回しかありません。今宵はその1回。ちょっと遠いですが、皆さまもぜひどうぞ!
砂浜も心地よかったですよ。渚に打ち寄せられていた珊瑚や貝殻を拾ってきました。水族館で聞いた話では、ここらの砂浜は珊瑚の粒子でできているそうですが、そう思って砂をすくってみると、本当だ、珊瑚です。
お土産にシーサーをとは思っていましたが、なかなか気に入ったシーサーに出会えませんでした。ところが、ホテルのショップを覗いていたら、沖縄の屋根の赤土色で彩色し、逆立ちしたようなシーサーが目に飛び込んできました。なんともユーモラスでありながら気品があります。作家の名前が宮城須美子さん。人間国宝・故金城次郎氏の長女です。もうこれしかないと、即決で購入を決めました。
シーサーはいま家の玄関においてありますが、ルビー婚(40年)、金婚(50年)、ダイヤモンド婚(60年)へときっと私たちを守ってくれると信じ、一緒にあゆんでいこうと思っています。
CHATEAU LAFITE-ROTHSCHILD(ラフィット・ロートシルト)
アグー豚のコンフィと島豚の月桃風味 スーチカーのミルフィーユ仕立て
エディブルフラワーのサラダと共に
沖縄産イノシシとフォアグラのテリーヌ サラダ添え 無花果と共に
活オマールエビ 魚・帆立の三色ムース青パパイヤのガレット添え
ヤギヨーグルトのアイスクリーム添え





