伊東の海辺で青い目のサムライを想う
東海館から松川沿いに下流へと10分ほど歩くと、目の前に海が開けます。ここは、英国人航海士・三浦按針(英国名:ウィリアム・アダムス)が日本初の西洋式帆船「サン・ブエナ・ベントゥーラ号」を建造した場所。海辺には彼の実績を記念して「按針メモリアルパーク」が作られており、胸像と帆船のモニュメントが置かれています。今回私たちが泊まったのは、この「按針メモリアルパーク」の目の前に2017年4月にオープンしたばかりの「星野リゾート 界 アンジン」。実は、伊東温泉の宿に宿泊して「お座敷文化大學」を受講すると、通常より体験料金がお得になる割引があるんです。首都圏からなら伊東は日帰りできる範囲ではありますが、できれば温泉に泊まってゆっくりと伊東の歴史を学ぶことをおすすめします。ウィリアム・アダムスが三浦按針になるまでを知る星野リゾートの界ブランドというと上質な和風旅館がラインナップされていますが、「界 アンジン」はマリンアンティークなインテリアが特徴。宿名に「アンジン」と人名を冠したのは、彼の半生を知ることで伊東の歴史に親しみ、この地での滞在時間を楽しんでほしいという思いが込められているとのこと。そこで、毎晩18:30~と19:15~の2回開かれる、ご当地楽「青い目のサムライ紀行」に参加しました。界ブランドのご当地楽は体験ものが多いですが、「界 アンジン」では三浦按針の功績を映像で紹介するという内容。スタッフ曰く「アンジンって何ですか?」という質問も多いということで、伊東にゆかりが深い按針について学べるものにしたのだそう。手書きの劇画風のタッチの映像に英語の字幕、そしてスタッフがその場で付けるナレーションで、英国から東洋探検に出航したアダムスが日本に漂着し、徳川家康に外交顧問として取り立てられて三浦按針の名を授かり、56歳で亡くなるまでを学びます。「この船を作り上げたらイギリスに帰らせてもらえるのでは…」との思いで帆船を完成させるものの、次はもっと大きい船の建造を命じられるクダリでは、思わずホロリとしてしまいました。ご当地楽のあとには、ナイトラウンジへと姿を変えたトラベルライブラリーで、按針の祖国・英国にちなんだ伝統のリキュールカクテル「パーフェクトピムス」などのアルコールが振る舞われました。妻子を残した母国に帰ることができなかった按針。その胸中を思いながら、グラスを傾けるひととき…。按針の生き様が私の心にもしっかりと刻まれました。船旅をイメージした新感覚の温泉旅館海と英国のエッセンスと、和の設えが見事に融合した「界 アンジン」。例えば客室はすべてオーシャンビュー。窓が足元まであるのでとても明るく、目線の先に広がるのは大海原。船旅気分の滞在を演出してくれます。部屋の間仕切りには古材を四角く切って組んだものや、葉山の古民家の欄間を用いたものがあり、隙間から光が差し込むので重たい印象にならず、唯一無二の雰囲気を醸しています。8階には爽快な景色が広がる大浴場と湯上り処があります。多くの湯上り客が集うのが、船の甲板をイメージしたサンブエナデッキ。按針が建造した帆船の名前が付けられ、本当に船に乗っているような心地になります。そしてお酒飲みの多田が何より食いついたのが、ビールのサーバー! なんと、15~19時までビール2種と伊豆名産のぐり茶などが飲み放題になっているんです。かつては長い航海の際に水では腐ってしまうため、飲料水としてビールが積まれていたといいますが、多田は今でも水よりビール派(笑)。長い航海に耐えられるよう防腐剤の役目をするホップを多めにして、アルコール度数を上げたIPAを片手に、青い海を前に按針の偉業に思いを馳せました。食事処もまた、「界 アンジン」ならではの魅力を放つスペース。路地をイメージしたといい、13パターンものパーテーションで2~6名席を個室風に区切っています。古書、段ボール、端切れ布、染めた新聞紙、カラフルなアクリル板、金属製のアルファベットなど、様々なマテリアルが用いられ、席まで案内される間、路地を曲がるたびに驚きの連続です!メニューにも一工夫あり、伊豆の食材を英国風の盛り付けと調理法で仕上げています。台の物の紙蓋焼きは、目の前でスタッフが紙蓋にハサミを入れて開くパフォーマンス付き。ふわっと海の香りとオレンジの爽やかな香りが広がりました。伊東に泊まるならちょっと知的に、和文化と歴史を学ぶ…。そんな大人の海辺の湯旅をしてみませんか?星野リゾート 界 アンジン(http://kai-ryokan.jp/anjin/)住 所:静岡県伊東市渚町5−12料 金:1泊2食オーシャンビューツイン29,000円~、 オーシャンビュースイート39,000円~(消費税・入湯税込)