《暮らしの土台が揺れるとき》
第1回 世界で揺れているのは、政治ではなく「生活」そのものではないか❓
ここ数日、氣になっていることがあります。
仏蘭西で若者たちが動き、
西班牙では住宅をめぐって人々が街へ出る。
少し視野を広げれば、
ここ数年、欧州各地では農民たちがトラクターを連ね、道路を塞ぎ、ときには警察と衝突するほど激しい抗議を続けています。
一つひとつを見れば、
まったく違う出来事です。
教育
住宅
農業
物価
エネルギー
そして、それぞれの国の政治
けれども少し離れて眺めていると、
別々に見えていたものが、同じ場所へ集まり始めているように感じるのです。
それは、
「普通に生活すること自体が難しくなっている」
という一点です。
仏蘭西では、若者たちが学校から動き始めた
現在、仏蘭西では高校生による抗議が全国へ広がっています。
発端となった地域では、
校舎の老朽化、
教師不足、
過密な教室など、
以前から積み重なってきた教育環境への不満がありました。
抗議は全国1,200校以上へ広がったと報じられ、
一部では警察との衝突も起きています。
単なる学校内の要求を超える社会問題になり始めています。
🔗参考記事
Reuters
https://www.reuters.com/world/high-school-students-paris-deprived-suburbs-spark-national-protest-movement-2026-10-03/
ここで氣になるのは、
「若者が過激になった」
という表面だけではありません。
なぜ、そこまで切迫するのか❓
自分たちがこれから社会へ出ていくための場所である学校そのものに、
「十分に支えられていない」
という感覚があるのではないか❓
そう考えると、
これは単なる教育問題ではなくなります。
西班牙では、「住めない」が街へ人を押し出した
その隣では、
別の入口から大きな動きが起きています。
西班牙です。
10月3日、
住宅問題への対応を求める抗議が50を超える都市へ広がり、
マドリードでは約7万人が参加したと報じられました。
中心にあるのは、
住宅価格と家賃です。
住宅不足と家賃上昇が重なり、
政府が提出した立ち退き抑制などを含む住宅対策も議会で否決されました。
さらに、87歳の女性が70年以上暮らした住宅から立ち退かされた出来事が、
社会の怒りを強める象徴的な出来事となりました。
🔗参考記事
Reuters
https://www.reuters.com/world/tens-thousands-protest-across-spain-over-housing-crisis-2026-10-03/
住宅政策・立ち退きをめぐる背景
Reuters
https://www.reuters.com/world/ally-spanish-pm-threatens-derail-housing-decree-fury-over-evictions-grows-2026-10-02/
こちらも要求は仏蘭西とは違います。
しかし、聞こえてくるものは似ています。
働いているのに、住めない。
あるいは、
この先もここで暮らしていけるという見通しが持てない。
住宅とは投資商品である以前に、
人間が眠り、食べ、家族と過ごす場所です。
つまり、
生活の最も基本的な土台の一つです。
そして農民たちは、もっと前から道路へ出ていた
さらに時間を少し戻すと、
もう一つの光景があります。
トラクターです。
仏蘭西、
独逸、
白耳義、
蘭陀、
波蘭、
西班牙……。
ここ数年、
欧州各地で農民の抗議が繰り返されてきました。
特に2024年には、
蘭陀・白耳義・波蘭・独逸などの農民がトラクターでブリュッセルへ集まり、
EUの環境政策、安価な輸入農産物、農産物価格の低迷、規制負担などへ抗議しました。
🔗参考記事
Reuters
https://www.reuters.com/world/europe/main-farming-groups-shun-brussels-protest-against-eu-green-policies-2024-06-04/
仏蘭西農民抗議
Reuters
https://www.reuters.com/world/europe/angry-farmers-prepare-confront-macron-paris-farm-fair-2024-02-24/
EU自身も、2023〜2024年の農民抗議について、
農家が自らの労働に対して十分な対価を得られているのか、
そして食品流通の中で農家の交渉力が弱いことを主要な問題として整理しています。
🔗参考資料
Council of the European Union
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-16779-2024-REV-1-ADD-1/en/pdf
高い燃料費
肥料価格
環境規制
農産物価格の低迷
安価な輸入品との競争
新しい通商条件
事情は国によって違いますが、
共通して出てくる言葉があります。
「このままでは農業を続けられない」
という言葉です。
ここは非常に重要だと思っています。
農民が求めているのは、
単にもっと儲けたいという話だけではありません。
作っても生活できない。
作るための費用は上がる。
しかし農産物の値段を自由に上げることもできない。
そして農業をやめれば、
その土地から生産者そのものが消えていく。
これは産業問題であると同時に、
食べ物を誰が作るのか❓
という問題でもあります。
「政治への不満」で全部を括ってよいのだろうか❓
ニュースを見ていると、
政府への不満
右派と左派
移民問題
環境政策
財政問題
選挙
そうした言葉で一つひとつが説明されていきます。
もちろん、それらはすべて重要です。
けれども私は、
そこだけを追いかけていると何かを見落とすような氣がしています。
なぜなら、
仏蘭西の高校生と、
西班牙で住宅を求める人々と、
トラクターで道路を塞ぐ農民には、
政治思想とは別のところで共通するものがあるからです。
それは、
自分の生活を自分で維持できるという感覚が、薄くなっていること。
ではないでしょうか?
食べる、住む、働く
人間が生きるために必要なものは、
それほど複雑ではありません。
食べる
住む
働く
身体を休める
子どもを育てる
明日の生活を想像する
ところが現在、
その一つひとつに以前より大きな不確実性が入り込んでいます。
食料価格が上がる
家賃が上がる
エネルギーが上がる
金利が上がる
農業の生産費が上がる
氣候が安定しない
働いていても、
来年が今年と同じように暮らせるとは限らない。
こうして並べてみると、
いま世界で揺れているのは、
政治体制のもっと下にあるものなのではないか❓
そんな問いが浮かんできます。
「生命の危機」とは何だろう❓
ここでいう生命の危機とは、
明日突然、
世界中から食べ物がなくなる、
という意味ではありません。
もっと静かなものです。
昨日まで普通にできていたことが、
少しずつ難しくなる。
家を借りる
農業を続ける
子どもを学校へ通わせる
食料を買う
将来の予定を立てる
一つひとつなら耐えられる。
けれども、
いくつもの生活基盤が同時に細くなっていったらどうなるのでしょう❓
人はどこまで我慢するのか❓
そして、
どこから「もう無理だ」と街へ出始めるのか❓
日本は別なのだろうか❓
ここで、
「それは欧州の話だ」
と切り離すこともできます。
しかし、この島でも昨年から米をめぐる大きな混乱がありました。
そして今年、
僕の身近な農業従事者からも、
「今年は作物の出来が悪い」
という話を何度も聞くようになりました。
氣候も安定しない
農家の高齢化も進む
肥料も燃料も必要です。
米の価格が高くなれば生活者が苦しい。
ところが価格が下がりすぎれば、
今度は作る側が続けられない。
つまりこれは、
消費者 対 生産者
という話ではありません。
その両方を成立させてきた仕組みそのものに、
無理が出始めているのではないでしょうか。
世界の足元を観る
大きな国家
金融市場
戦争
AI
宇宙
そうしたニュースは目立ちます。
けれども、
人間が実際に生きている場所はもっと低いところにあります。
土
家
食卓
学校
身体
そして日々の仕事
世界を見るとき、
上で動く巨大なものばかりを見ていると、
足元から始まっている変化を見落としてしまうことがあります。
いま起きていることは、
「誰が政権を取るのか?」
よりもさらに手前の、
「人が普通に暮らしていけるのか❓」
という問いなのかもしれません。
そして、この問いを追いかけていくと、
次にどうしても見なければならないものがあります。
食べ物です。
食料価格ではありません。
スーパーの棚でもありません。
そのもっと手前。
誰が、土に種を播き、食べ物を作っているのか❓
そして、その人たちは今、
本当に作り続けることができているのか❓
次回は、
《食べ物を作る人が消えていく》
というところから、
この島の米、農家、石油、肥料、そして今年の氣候へ降りてみようと思います。
答えを急がず、
まずは足元で何が起きているのか❓
もう少し観てみます。
All Green Project 🌿
ai-kusunoki & 「6」
構造で読む力を、暮らしの中心に。
