九条刺納樹皮色袈裟(くじょうしのうじゅひしょくのけさ) 幅2メートル53、縦1メートル47
聖武天皇が崩御されてから四十九日
天平勝宝8年(756年)6月21日に光明皇后は聖武天皇ゆかりの宝物を東大寺大仏にささげられた
これが正倉院宝物のはじまりである
この時に作られた宝物リスト「国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)」には六百数十点の宝物名がずらりと並んでいるが、その第一番をご存知だろうか
聖武天皇が愛した品や鑑真ゆかりの器・・・貴人の暮らし、生き方伝える<第75回正倉院展・東京講座>
国家を代表する宝物の中でも一番の宝物
さぞ煌(きら)びやかなものに違いないと思うところだが、挙げられているのは端切れを細かく刺し子縫いして作られた袈裟(けさ)、九条刺納樹皮色袈裟なのである。
天皇の持ち物であることを示す「御」を付け、「御袈裟」と記されていることから、これはお召しになられた袈裟なのだろう
聖武天皇は生前みずからを「沙弥(しゃみ)」(見習い僧)と称されており、歴代天皇のなかではじめて出家をされている
細かく端切れを綴(つづ)った袈裟は糞掃衣(ふんぞうえ)と呼ばれ、本来は文字通りトイレで使うしか用のないようなボロ切れで作られた袈裟を意味している
これはお釈迦(しゃか)さまが定められた最上の袈裟のあり方で、欲望を捨て去り真理の道に入っていく生き方を示している
正倉院の場合は天皇の着用にふさわしく各色の絹糸で作られ見た目も美しいが、精神としてはあくまでボロ切れの袈裟と言えるだろう
宮廷を彩った数々の宝物のなかにあって、このボロ切れを意味する袈裟こそが最高の宝物とされていた
そこには仏の教えを篤(あつ)く信奉し、理想の国造りを目指した聖武天皇の御霊(みたま)が宿られているに違いない(奈良国立博物館主任研究員 三田覚之)
「第75回正倉院展」 に出展されている宝物について、奈良国立博物館の研究員が考察を加え、その魅力を解説する
【会期】11月13日まで(会期中無休)
【開館時間】午前8時~午後6時(金、土、日曜は午後8時まで)
(この記事は、読売新聞オンラインの記事で作りました)
聖武天皇は東大寺大仏建立を指示した人物であり、大仏建立によって国家安寧を願ったとされる
熱心な仏教信者であった
正倉院宝物のトップにや釈迦の理想とされた袈裟が来ていることに聖武天皇の仏教への篤い思いが伝わる
大仏建立には民衆に慕われた僧侶・行基も参加させられた
行基は残念ながら大仏建立完了前に亡くなった
正倉院宝物の魅力や見方・歴史などを写真とともに分かりやすく紹介・解説
正倉院宝物の最適なガイドブック