もっさん、この日は松戸へ。
お相手はこのお方でございます。

デビルマン「お疲れ様でーす」
パディントン「宜しくオナシャス!」

我が食べ歩き道の師匠、デブルマンことぽちゃまる氏。
1月に銀座の寿司食べ放題に行って以来、3ヶ月ぶりのタッグ結成でした。

JR常磐線を松戸駅にて下車し、向かいますのは駅から程近くの商業施設、旧伊勢丹・現「キテミテマツド」の地下フロア。



スーパーの「ロピア」さんのお会計カウンターの奥へと進みますと。
知る人ぞ知る、名店が現れます。




「懐食みちば (かいしょくみちば)」さん。
2024年4月9日訪問。
11時57分入店。
「和の鉄人」こと道場六三郎氏。
「料理の鉄人」を視聴していた世代であれば、氏のブランドイメージは絶大でしょう。



その道場氏のプロデュースにより、松戸にオープンしたのが「懐食みちば」さん。
同店を運営する「株式会社道場六三郎事務所」の公式サイトでは、その成り立ちがこう記されていました。

『(道場六三郎氏は)2005年には「現代の名⼯」を受賞するなど、料理⼈としての地位を確固たるものにしてきましたが、御年92歳。

集⼤成として和⾷の伝統を踏まえながら新しい料理に挑戦する姿勢を継承した愛弟⼦たちの活躍する場を広げ、またその味をお客様に“もっと⾝近で”もっと気軽に”楽しんでいただきたいという想いから、2023年2月、新たに「懐食みちば」を出店しました。』

みちばさんのコース料金は、「銀座ろくさん亭」さんの3分の2程度に抑えられています。
上記の説明からも、

「本店をカジュアル化したネクストブランド」

と見て間違い無さそうです。



カジュアルダウン版と言いましても、みちばさんでシェフを務められる一ノ谷浩司氏は、道場氏に20年以上師事した筋金入りです。
お手頃なお値段、かつ近場にて本家直伝の「道場和食」が頂けるお店とあらば

デビルマンパディントン「いつか行ってみたいですなあ」

我々の間で話題になるのも、至極当然と言えましょう。

そうこうしている内に

デビルマン「ランチは大人気らしい」

と、評判が高まってきた事を受け

パディントン「ほな、取り敢えず予約してみまっか〜」

ザ・安請け合い。
この時点でもっさんはみちばさんの予約をかな〜〜〜り楽観視しており、悠長に構えております。

みちばさんのお料理は、「季節の夜席お献立」と「季節の昼席お献立」の2種類。
もっさんらのお目当ては昼席。
所謂「平日ランチコース」ですね。

オンライン予約は毎月1日の午前11時(1日が定休日の場合は2日)に、翌々月分の予約枠が開放されます。

店舗公式サイトからの予約は某「T◯RETA」さん経由ですが、このサイトがまあ酷い(直球)。
もっさんは元々、T◯RETAさんが好きでは無いんですよね……。
UIやレスポンスが良く無いので、「OMAKASE」さんや「TableCheck」さんらとは、比ぶべくもありません。

迎えた2月1日、11時。
サーバエラーが頻発し、予約ページに繋がりもせず10分弱が経過。
一向に埒が明かない状況が続いて、もっさんも肝を冷やします。

結果、ちょいとした小技を用いて、なんとか予約争奪戦を勝ち取りました。
時間の取れる方は、お店へ直接電話を掛けまくった方が良いかもしれません。

で、当日でございます。
師匠ともっさんは開店の定刻15分前に現着。
ランチは事実上の完全予約制と化している為か、皆さんのお出ましもゆっくりですね。
我々が1番乗りでした。



鈍く光るスチールの扉からは店内を伺えず、それが一層に期待感を煽るかのようです。
定刻の3分前、11時57分には開店となり、席へ案内されました。

◯ 本日のランチ:卯月の昼席お献立

着席すると、先ず目に飛び込んで参りますのは

デビルマン「これこれ、テレビで見てたやつ!」
パディントン「これぞ『道場スタイル』よね!」



手書きによる「お品書き」です。
料理の鉄人直撃世代か否かによって反応は異なるのでしょうが、もっさんには刺さりますよ!
テンション爆上げでございます!

店内はオープンキッチンで、お料理の様子がカウンターからも拝見できます。
前菜の盛り付けが進んでいく中、キッチン中央のコンロに大きなお鍋が用意されました。
これはいよいよ、アレのご用意かしら?

◯ 先附 引き立て一番出汁
お食事は一番出汁からスタート。
お鍋へ大量の鰹節をざぶざぶ投入!
立ち上る香りに、店内が沸きます!




シミひとつ無い白いお椀が配膳。
その佇まいに、こちらの背筋もピン!と伸びる思いです。




取り立て作り立てのお出汁をズズっと。
お出汁は澄み切っており、かつ鰹と昆布の旨みがとても濃厚。
塩加減も完璧!
素晴らしいスターターです。

◯ 前菜盛り合わせ



前菜は5点の盛り合わせ。
上掲の「お品書き」には3点のみが記されていますので、レギュラー3種+入れ替え2種というスタンスかと思われます。



何も伝統的な和食の枠のみには留まらない、工夫とアイディアに満ち溢れたお料理です。
素材本来の味わいを活かしつつ、前菜らしくやや濃いめの味付けで統一されているように感じました。

◯ 前菜 春きゃべつと槍烏賊のさらだ仕立て 山椒ドレ
◯ 同 ローストビーフ 春野菜のお浸し巻き



春キャベツは槍烏賊と一緒に、山椒が香るフレンチドレッシングで合わせています。
烏賊が柔らかで実にうまし。



ローストビーフは山葵の葉と菜の花のお浸しを巻き込んで春らしさを演出。
お品書きに載っていないお料理ながら、これがまあ〜只者では無い美味しさ!
赤味噌をベースにポン酢を加え、ピリ辛に仕上げたみちばさん特製の味噌ダレがバチっとキマっています。

◯ 同 黄金チーズ
◯ 同 海蘊のジュレ つぶ貝を乗せて



右へ移って、「黄金チーズ」。
酒粕と西京味噌に漬けたクリームチーズへ胡麻を塗して炙っています。

道場六三郎氏のスペシャリテのひとつ、銀座ろくさん亭さんの定番料理「クリームチーズの西京味噌漬け」をモディファイしたものでしょう。
この一品は昼夜共にコースへ含まれていますので、みちばさんの「名物」と言って良いかと思われます。

チーズでありながら、纏う旨みと香りがしっかり和食!
お酒が飲みたああああい(血涙)。


海蘊酢はジュレ仕立てに。
暑い季節を先取りした、涼やかな一品です。
つぶ貝の弾力ある歯触りが小気味良し。

◯ 同 海老と帆立 ポテトソース



裏漉ししたポテトをチーズと合わせた「ポテトチーズソース」。
これが即ちこの一品の主役であり、本体と言えるでしょう。

ポテト・海老・貝柱を乗せたところに、鰹出汁の餡を掛ける辺りが実にニクい!
ポテチーソースへ焼き目を付けて、安易にグラタン風へ逃げたりしないんだなあ、と感服しました。
「道場和食」のアティトゥードを垣間見たように思います。
◯ 小吸物 花弁見立て 海老真丈椀



続いては椀盛。
会津塗りのお椀は黒地に赤の丸模様が映えています。



このお料理は器を含めての花弁見立て。
お椀全体には霧が吹かれているのは、朝露を表現したものでしょうか。



具材は海老真丈。
周りを白木耳で包んであり、真丈の柔らかさと木耳のプリプリな歯触りがコントラストを生じています。 



先を尖らせ、丸みがでるようにカットした「いかり蕗」の食感と香気が、お料理全体へ程よいアクセントを齎しています。
お椀全体が一幅の絵画であり、ひとつの世界。
奥行きと深みを感じる一品でした。

さて、前半戦が終わった訳ですが。

パディントン「もう既にお得感がヤバい、ヤバくない?」
デビルマン「都内なら幾らになるやら」

ハイコスパという噂は本当じゃったか。
否が応でも、後半戦へ期待が高まりますぞ!

◯ 御膳盛り

みちばさんの「昼席」はその名が示す通り、会席料理の常道に則った組み立てです。
但しランチコースとあってか、強肴は略した構成となっています。



御膳盛りでは、メイン料理の「刺身」「焼物」「煮物」がいっぺんに配膳されました。

◯ 刺身 鮮魚さらだ仕立 桜鯛 水蛸




お刺身は桜鯛と水蛸のサラダ仕立て。
薄くスライスしたパプリカが散らされ、目にも鮮やかです。




お料理の肝は、トリュフオイルを用いたポン酢ドレッシング。
かなり品質の良いトリュフオイルと見え、ドレッシングの量は然程でも無いのですが、トリュフの香りがグワッ!と立ち上がってきます。



またこのドレッシング、香りは強いのですが、味わいは桜鯛・水蛸の淡白な旨みの邪魔をせず、寧ろ引き立てています。
ガーリックチップが齎すコク味とインパクトも素晴らしい。
唸るような美味しさ!
この日の白眉でした。

◯ 焼物 釜焼き地鶏 焼きやさい色々


地鶏はキッチン後方に設置された石窯での焼成。
表示を見た限り、焼成の庫内温度は450℃超。
恐らくは500℃近くまで上がるようです。





焼き上げた鶏もも肉は溶岩プレートへ乗せられ、熱々をキープしています。
釜焼きの効果か、お肉は見た目以上にジューシィ!
パリッと強めに焼き上げられた皮目の香ばしさが、山椒味噌と相性抜群です!
鶏うまっっ!




焼き野菜はアスパラ・エリンギ・かぼちゃ・玉ねぎ。
添えられているのは道場六三郎氏の考案による「肉マヨソース」。
端的には鶏そぼろとマヨネーズを合わせたものでしょう。
これがまた美味い!

デビルマン「エリンギの旨みが凄い!」
パディントン「アスパラと鶏肉を一緒に頬張ると…最高やな!」



肉マヨに入った、鶏ひき肉のサイズ感が絶妙!
出しゃばり過ぎず、かつきっちりと肉らしさを残す絶妙な挽き具合。
舌触りが本当に素晴らしい。

鶏の旨みがおマヨへバッチリと入っており、野菜の美味しさを2段階上へ跳ね上げています。
山椒味噌との合わせ技もまた良きですね。

◯ 煮物 揚鰆のみぞれあん掛け




鰆は軽めの衣で揚げられており、この衣が一種独特な食感。
天ぷらと竜田揚げの中間のような?
口内ではらりと解ける鰆の身ごろと、衣の相性が抜群でした。



鰆の上には大根おろしを乗せ、とろみを付けた鰹出汁の餡をたっぷりと掛けています。
白いご飯がなんぼでも行ける美味しさ!

◯ 御食事 季節の釜めし

お食事はご飯を「季節の釜飯」 or「とろろご飯」からの選択制です。
とろろご飯には留め椀の赤出汁が付いてきますが、釜飯は更に赤出汁orお出汁が選べる趣向です。
もっさんは一も二もなく、釜飯にお出汁をチョイスします。




登場の季節の釜めし。
この日はシラスと牛蒡の釜飯でした。




先ずは釜飯をお茶碗に装って、そのままの味わいを楽しみます。
なんだかよくわかりませんが、牛蒡がめっちゃうまい(語彙消失)!




2杯目からは早速、出汁茶漬けに。
もっさんは出汁茶漬けが大好物なのですが、「道場流 命の出汁」での茶漬けを頂ける機会なぞ、然う然うに有りますまいて!






お出汁のお代わりを頂きまして、3杯目と4杯目はお焦げを上へ向けて香りを楽しむと共に、薬味も添えて啜り込みます。
これぞ釜飯の三段活用!!
うまい(炎柱並感)!!!

パディントン「このお出汁に肩まで浸かりたい」
デビルマン「また言ってる」
パディントン「そーゆう入浴剤が有ったら絶対買うけどなあ」



食後には香の物と温かいお茶を合わせて頂くのがもっさんのルーティーンですが、今回は命の出汁とのカップリングです。
いやあ、贅沢至極!

◯ 水菓子 特製焙じ茶ぷりん
◯ ホットコーヒー


コースのラストは水菓子。
焙じ茶プリンです。




プリンの上に乗せた焙じ茶ジュレは、かなり渋めの味わいです。
ジュレの鉄器を思わせる香ばしさと、プリンの程よい甘み。
両者のバランスが良きかな。
追加オーダーしたホットコーヒーとも良く合っています。







お料理はお見事と言う他に無し!
挙句、客側が心配になる程の超コスパ!
そりゃ予約も集中しますわな〜〜。
季節を変えて、またお邪魔します。
ご馳走様でした。