全日本選手権に向けて私の気持ちは穏やかだった。
1998年に初めて全日本に出場して以来、何度優勝を逃してきたのだろう。
種目別優勝も勿論だが総合優勝も取れなかった。
「シルバーコレクター」そんな異名がついていた。

「準優勝は勝利じゃない、優勝しなければ負けなんだ」
ずっと思っていた。
だからこそ2013年の全日本でスラローム優勝、トリック優勝、そして総合優勝し桂宮杯に手が届いた時の喜びは未だに表現することが出来ないほどであった。

自分の目標だった桂宮杯。
一生取れないかもしれないと思っていた桂宮杯。
その桂宮杯を自分のものに出来たことで、これまでの挑戦者としての心境に変化が生まれた。

初日朝一はトリック予選だった。
本当に落ち着いていた。
トリックは最も自信がある状態だった。
練習では何度やっても毎回往路復路共に完走していた。
これ以上練習する必要がないほどに仕上がっていた。

水に入ってスタートした。
気持ちは落ち着いていた。
なのに体が全く動かなかった。
開始ブイがあっという間にやってきて演技開始。
何度も転びそうになった。
結局往路は15秒程度で転倒。

自分で気がついていないだけで、実はものすごく緊張していた。
復路に向かう。
落ち着きを取り戻してトーホールド(足でロープを保持し演技を行う)のパスに向かう。
T5B (トーホールド540度水面回転)から入った。

そこから記憶が無い。
得点から計算すれば、T5Bの後のTBBで転倒したようだ。
なんで転倒したのかさえ覚えていない。


とにかく転倒して予選落ちした。

この時点で総合優勝はもちろん、総合上位も狙えなくなった。

全日本の怖さを改めて知った瞬間だった。