報復 ジリアン・ホフマン著 ヴィレッジ・ブックス

いや~、久々にハラハラ・ドキドキしながら読んだぜ!って嬉しくて小躍りしたくなってしまう程面白かったです、この本。

『検死官』シリーズ最新刊『痕跡(上・下)』と“直木賞受賞作ついに文庫化!”のキャッチコピーと共に大々的に宣伝していた桐野夏生著『柔らかな頬(上・下)』がイマイチ自分的にヒットでは無かったので、久々にツボに嵌る面白い小説に巡り会えて嬉しくて仕方無い!というのが正直な感想です。

初っ端から結構残酷なレイプ事件から幕を開けてしまうし、主人公である検察官C.J.タウンゼントが追う連続殺人事件は前述『検死官』シリーズのスカーペッタが追っていた事件以上に凄惨きわまりないけれど、それを押しのけても良いと言える力強さを秘めています。

何と言っても、ミステリー小説の醍醐味と言うべく、伏線の貼り方が上手い。事件が最後に探偵がベラベラ喋って終わる、お粗末な終わり方をしない。それに、青臭い正義感を振りかざす嫌みな登場人物が居ない。ヒロインである検事補も、裁判で敵対する弁護士も、どちらもステレオタイプ的な敵・味方的な描かれ方では無く、それぞれ自分の信念を貫く為に迷ったり悩んだりしている姿が素敵だな、と思いました。

本を読むのが好きな人なら、一度は物書きになりたいと夢見た事があると思うけれど、この著者もヒロインと同じように、とある州の検事局で検事補として働いていたそう。こういういかにもプロが書いた、という小説を読んでいると、あぁ、自分も何か専門的な仕事に就く為にもうちょっと努力すれば良かったな、と心底後悔します。

でもまぁ、今高校生とか中学生からやり直したとしても、結局は同じような人生を歩んでしまうのでしょうけれど。