そのトレーナーの青年は、全く容赦しない男であった。
いきなり、「スタンスが狭いっ!!!」と一喝してきた。
え?こんなもんじゃないの?
「駄目です。そんなに狭いんじゃ、素早く動けない」
ふ~ん。ベニー・ユキーデ(マーシャル・アーツ※キックあり)なんか、これ位だったと思うんだけど、ボクシングは違うのか...
「70年代のボクシングは今では通用しませんからねっ!!ぴょんぴょん飛び跳ねたら、跳ねた時に打たれますよ!!」
別に70年代を意識しているつもりはないんだが...それに俺はぴょんぴょん飛び跳ねるのはそもそも好きじゃないよ。
まあ、とにかく、彼は「全部駄目だ」と言う。「駄目」については枚挙にいとまがない。
あろうことか、私の自称『元・石の拳』と異名を取る左フックについても、
「そんなモーションじゃあ、こっちが打つ前に顔面打たれますよっ!!!」
と言ってきやがった。
言われてみると、確かにそうなんだけどさ...
キックの体験の時と偉い違いだな。
ったく、「ボクササイズのコースもあります」ってホームページに書いてあったぞ...
「え?ボクササイズ希望だったんですか?」
あら、聞こえちゃった?
いや、そういう訳じゃないんだけど、ホームページに書いてあるじゃん?
「あー、そーですよねー。でも俺、ボクササイズは知らないから、教えられないんだよな~」
...
しかしながら、全部駄目だと私の名誉にもかかわってくるので、ほめられたことも書く。
ほめられたのは、「そもそも基礎体力はあるのでパンチは元々強い。スピードももっとある筈」だけである。その後に、「足腰が弱っているので(駄目)」が続く。
まあ、自分のことはどうでもいいや。
少々彼に教えてもらっただけで、彼のパンチが非常にズシンと重いことが解った。
当然だが、決して彼は、全力で打っているわけではない。
小突いているだけだ。
しかし、なんて重いんだ。
まるで身体の重心をそのまま飛ばしているような感じだ...
これはひょっとして...
私は意を決して彼に聞いた。