よーし、仕事も終わったし、今日は(ボクシングの)ジム行くか~。
高校生のイケメン少年、タカシ君は今日も来ていた。
いい少年だ。眼が輝いてるね。やはり目標に向かって走る若者はいいよな~。生きてるのか死んでるのかわかんないような顔して歩いてる奴らとは全然違うぜ。
タカシ君がマス・ボクシング(当てないスパーリングみたいなもの)の相手をしてくれた。
速いぜっ!全然反応できない!おい、突然私の視界から消えるなよ!
汗を拭くいている最中、私は「そのうちプロ・テスト受けるんでしょ?」とタカシ君に聞いた。
「いや~悩んでます。自分ではこの世界で生きていくのは無理だと思うし。」
「そっか。でも、ライセンスは取ればいいじゃん。無理なら試合しなけりゃいいんだし。そういう人だっているでしょ?」
「はい。でもその前に、プロ・テスト不合格だったら落ち込むな~と思って。」
「落ちたらまた受ければいいだけじゃん。ん?君って、ひょっとして自分が傷つくのに耐えられない性格?」
「そうなんです。自分が傷つけられるのが怖いんです。落ちたらどうしようって。へこむな~立ち直れないかもしんない。」
「なるほど。でも大人の社会にはもっともっと君を傷つけるやつがうんざりするほどいるぞ。」
「ですよね~」
心配するなよ。
若い時に傷ついた方がいいんだぜ。
若い時に傷ついておかないと、大人になって傷ついた時に耐えられないぜ。
若い時に傷ついておけば、大人になって傷ついても大丈夫なのさ。
それにな、若い時についた傷は、もし治らなかったとしても、それからどんどん光り出すんだぜ。
本当だよ。
「若い時はわからないけど、大人になればわかる」なんて俺は言わない。
わからなくていいんだ。わかるはずないじゃん。
そして、ついた傷が多ければ多いほど、君はまぶしくキラキラ光ってくるんだ。
君を傷つけようとする奴らは、君のその光で逆にやられちまうのさ。
目をつぶって触ろうとする奴もいるだろう。でも、その傷は凄い切れ味でそいつらをスパっと切っちまうんだ。
だから、傷は多い方がいいのさ。
傷ついてない水晶なんか、せいぜい占いに使われるだけだろ?
傷つくのが嫌なのも、怖いのも当たり前だから、それはそのままでいいんだよ。
性格直す必要なんか全くないね。
いいかい、傷つけば傷つくほど、君はキラキラ光りだすんだぜ。
<松村雄策『傷だらけのガラス玉>
