梨木香歩氏著「f植物園の巣穴」を読んだ時、ああ、と声が出た。
これを読むと、色々な他の小説が浮かんでくる。
でも、これが物語の王道なのかもしれない。
いや、言葉を間違えた。「王道」というより、物語の「大衆道」といった方が、しっくりくる。
いつまでも浸っていたい異世界。それが日常の中に、見慣れた風景にまぎれて、こっそり仕掛けられている。それはハリーポッターの駅のホームのように、普通に見ていたのでは、見逃している。
でも意外と、これも事実に近いところから、来ているような気もする。
これは実際に私が見た話だが、ある冬の日の夕暮れ、沈みそうになっている夕日の陰になったバス停に、老婆に手を引かれたゲゲゲの鬼太郎が、ちゃんちゃんこに半ズボン、裸足に大きめの下駄という恰好で、ひっそりと佇んでいた。それも見るからに怪しげな場所ならともかく、その後ろには、ウニクロがあるような普通の道でだ。その反対側の道を歩いていた私は、思わず視線を逸らせてしまった。
コスプレ公園とか、ハロウィンの渋谷スクランブル交差点とか、そういうところでなく、自分の街の日常の風景に、そんなモノがいた。告白するけど、いい年をしてちょっとビビった。
今のところこの手のテーマを書く予定にないが、
こんな風に始まる物語、ちょっと書いてみてもいいのかもしれない、と思った。
皆さんの書く物語は、どんな世界ですか?