エグゼクティブスポーツライン登場
メーカーがとにかく品番を増やし、廃版の山を築くセイコー・アストロン。
僕は、その中で愛用のSBXB055が、依然一番良いデザインだと思っている。
そんなセイコーアストロンに、エグゼクティブスポーツラインなるシリーズが登場した。そのレギュラーモデル3本のうちの1本、SBXB170がまさにSBXB055の後継と思われるデザインに仕上がっている。すなわちピンクゴールド風加工のラバーベルトモデルだ。
エグゼクティブスポーツラインは、それに先立って発売されたエクスクルーシブラインのデザインコンセプトを踏襲しながら、ラバーベルトが採用されている。
ハイエンドモデルの位置付けなので、あの不自然に軽いチタンボディとバームクーヘンのように盛り上がった二面表記ベゼルが採用されている。
SBXB055
SBXB170
新旧の違いは?
デザイン上の違いでまず目につくベゼル、ベルト、ホールディングバックルの意匠であるが、その他にも色々と変更されている。
・べゼル
170には例のプリンのように盛り上がった、立体二面表記(上面と側面に目盛りがある)ものが採用されている。また055では都市名表記だったものが、170ではUTCからの時差表記となり都市名表記は側面に追いやられた。
ベース色もブラックがブラウンに。
僕は、別投稿でも書いたが、なぜセイコーがダイヤル全体を薄く作る中で立体感も出す時計作りをせずに、あからさまに分厚く見える時計を作るのかが疑問でならない。
表記の内容は好みがあろうが。
・ベルト
素材は変わらないが、意匠は大きく変わった。またホールディングバックルの構造とデザインが変わった。
それ自体はいいのだけど、別売部品のノバク・ジョコビッチ限定モデル用のクロコダイルベルトを装着できなくなってしまったのは、ちとても残念。ジョコビッチモデルは年次で発表されるが、このモデルの前のモデルから特徴であった「茶色いクロコダイルベルト」が廃止されてしまった。
・ダイヤル
055は、スモールダイヤル類の縁取り内側/外側両方にゴールドのラインが入り、インデックス類も立体的なゴールドのものであった。
対して170は、スモールダイヤル類の縁取りは外側だけに極細のゴールドのラインが入り、インデックス類も平面的なものに変わりごく普通の印象に。全体的に、派手さを抑えることで大人しさから「上質感」を演出したい意図が見える。まあそこは好みもあろう。
しかしPA/AP小針が、24/12という表記に変更されたことが解せない。なぜこうしたオーソドックスで良い部分に個性を出そうとするのだろうか。24/12では一瞬考えないと、頭の回転の悪い僕には、何の表記なのか理解できない。
ベゼルもそうだが、変化のための変化の部分に思えてならない。デザイナーは本当に必要と思って、さらにはアストロンの進化に必要な要素であると判断して変化させたのだろうか? それとも単に真新しさを出す演出なのだろうか?
・ケース
055がオーソドックスな形状なのに対し、170は取って付けたような別付けリューズガードとなっている。丸いプッシャー自体はクラシカルで悪いデザインではないが、この後付感があるリューズガードをどう捉えるかで時計の評価は分かれるように思う。
エグゼクティブラインでは、リューズガードを廃止しプッシャーにカーブを付けてリューズガード風のエッセンスを与えているが、ネットでは不評。だから、今回は後付したように見えなくもない。
もちろんケース自体の素材も、055のステンレスに対し、170はチタンで異様なほど軽いから、そこの好みも分かれるように思う。
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そして価格。055の183,600円(実売13万円)に対し、今回の170は驚くなかれ280,800円(実売20万円代前半)。
055はいまだ現行ラインアップに残るロングランモデルとなったが、170の登場でディスコンになるのか? それとも、そこそこ売れているので残しているのか?
僕は055を12万円程度で買ったが、SBXB055は現行ラインの中でもバーゲンプライスであると思う。
僕は、この手の時計にプラス10万円の差は大きいように思う。多少のディテールの違いは、使っているうちに感覚的に意識しなくなるものでもある。
アストロン1本だけ、もしくは持っている時計の中で最も高級な時計という位置づけで考えると、真剣に吟味する必要があるかもしれない。
しかし、僕は055の方に軍配を上げたい。別売のノバク・ジョコビッチ限定モデル用のクロコダイルベルトを装着することで別の性格の時計になり「一粒で二度おいしい」のもポイントだと思っている。
SBXB055のレザーベルト仕様=SBXB060 ジョコビッチモデル
なぜスポーツラインなのにクロノグラフがない?
さてこの2本、ムーブメントは全く同じ。いわゆる8Xデュアルタイムで機能は同等。
8Xデュアルタイムは、好評だというし、それに乗ったマーケティングなのであろうか。
ネットでは時計に詳しくないユーザーが、「8Xクロノグラフは無用な機能、秒針も小さく最低」「新しい8Xデュアルタイムはやっと秒針が大きくなって魅力的」等々の頓珍漢なレビューを上げていたりもする。
しかし僕は、スポーツラインを名乗るのであれば、クロノグラフが是非とも欲しいと思うのである。
少なくともオフタイムのアクティビティに置いて有用活用できるのは、二カ国の時間を知るデュアルタイムではなく色々な時間を計測できるクロノグラフの方であろう。
例えば、SBXB167。これはスポーツウィッチの売れ筋、ステンレスに青をあしらい魅力的に仕上がっている。
SBXB167
デュアルタイム用の小時計は、なんと過去の限定モデル「みちびき」スペシャルエディションのようなMOP(マザーオブパール=白蝶貝)。
うーん、ヤバいヤバい。
もしこのデザインで、8Xクロノグラフのムーブメントを採用した時計が登場していたら……。個人的に金欠の今、金策をしてまた散財してしまうところだった?!
だってタキメーター表記ならバームクーヘンの様な立体ベゼルは要らないでしょ? もっともセイコーは無用の長物である都市名表記のクロノグラフを沢山製造しているのが心配ではあるが。
今後このラインにクロノグラフが出るかどうかで、セイコーのアストロンにおけるクロノグラフの将来的な姿勢を占うことができるかもしれない。