その日は気持ちの良い快晴!☀
私と旦那はティファニーで結婚指輪を無事購入しました。
お互い贈り合う形にしました。
店を出た旦那は「指輪って思ったより安く済んだ。もっと高いかと思ってた」と言いました。
 
やっぱり。
確信しました。
この人は、これ以上の指輪の購入は無いと思っている。
婚約指輪の存在を知らないんだ。
 
私の心拍数が一気に上がりました。
ここで、ここで欲しいって言わないと、私の夢が…、
憧れが…、
 
私は恐る恐る、そして遠慮がちに、
「あのね、結婚する時の指輪には2種類あって、結婚指輪と、婚約指輪っていうのがあるんだよ。今買ったのは結婚指輪」
「え?じゃあ婚約指輪って何?」
視界が、何と言ったらいいのか…、緊張のためか、細かく震えてきました。
買ってもらえるのか、もらえないのか。
幼い頃からの夢は叶うのか、叶わないのか。
私はありったけの勇気を振り絞り、
「婚約指輪っていうのはね、婚約中に女性がはめる、男性に贈ってもらう指輪なの」(今なら、事前にもっとちゃんと説明しとけ、と思います)
すると旦那、
「何それ?もう一個指輪買わないといけないの!?お金がもったいないから買わない」
 
えっ…
買ってくれないんだ…
 
人生最大の憧れが、ガラガラと音を立ててあっけなく崩れていきました。
あまりのショックに、ジーンと痺れた頭は「言葉」という存在すら忘れています。
私は茫然としました。
 
目の前にいる旦那のイライラが、直接伝わってきました。
旦那は、本当に必要な物にはお金を惜しまないけれど、それ以外の物はとことん切り詰める倹約家です。
婚約後、お互いの懐事情は確認しました。旦那はどのブランドの指輪でも買えました。
でも旦那には、なぜ指輪がもう一個必要なのかが分かっていません。
イコール、買う必要無し。
今思えば旦那が、旦那にとっては何の役にも立たない指輪を、しかもある程度高額な物をもう一個買わされる意味が分からなくて、イラついたのは当たり前です。
私が上手く説明して旦那を納得させられれば良かったのですが、元々口下手だし、普段穏やかな旦那がここまで感情をあらわにする姿を見て、私は怖くて何も言えませんでした。
気付けば涙が次々に頬を伝い、それでも足りず、しゃくりあげていました。
さすがにその様子を見た旦那は、不機嫌そうに、
「欲しい物あったの?」
私はダメ元で言いました。少しの期待もなかった、と言えば嘘になりますが😅
「ダイヤとプラチナの、25万ぐらいの指輪」
ーー私も将来同じ物が欲しいな🎵ーー
妹との会話が蘇ります。
何年も何年も憧れてきた、スリーストーンの指輪です。
旦那の様子から、絶対に買ってもらえない事を悟りました。
そこですかさず悲しみを飲み込み(頑張った!)、検索しまくって決めた予防線を提示しました。これなら…!と。
「キュービックジルコニアっていう、ダイヤそっくりの石が付いてる2000円の指輪」
次が一番現実的だと思っていました。
「小さいダイヤが指輪の半分に付いた、ハーフエタニティ。75000円」
 
じっと考え込む旦那。
「その2000円の指輪と、75000円の指輪の、間の価格の指輪は候補に無いの?」
「ない」(本当に探しきれなかったです)
「75000円て、家賃と同じだよ!?もう…(ため息)」←家賃の方が高いが😐
 
さすがに旦那の中でも2000円の選択肢は無かったようです。
私は思いました。
 
75000円でも無理だったか。
そりゃそうだよね、婚約指輪にしては安い方だけど、単独で見れば相当な額だもん。
突然こんな額を提示されたらびっくりするよね…
それにこの時代、婚約指輪なんて絶対に買わなきゃいけない物じゃないし、買ってもらう理由だって、ただ「憧れてた」だけじゃ、説得なんてできる訳ない。
頭のどこかで、買ってもらえるんじゃないかって思ってた。
私、プロポーズに舞い上がって冷静さを失ってたんだな。。
もう…、
もう、いいや。
もういい。
「いいや、ごめん」
声を振り絞りました。かすれた変な声が出ました。
完全に、希望がついえた瞬間でした。
私はどこへともなく歩き出しました。
よく覚えていませんが、お互い無言でどこかの店に入り、昼食をとりました。
どうやって注文して、何を食べたのかは覚えていません。
その間も、ずっと涙は止まりませんでした。
そんな事だけ覚えていたりして😁
 
店を出ると、突然旦那が言いました。
「その75000円の指輪を買いに行こう」
えっ!?
「…いいの?」
旦那はイライラしながら言いました。
「早く行こう」
今思えば、旦那はこうでもしないと私が泣き止まないと思ったのでしょう。
本当に面倒くさい女になりました。よく捨てられなかったもんです……
 
ハーフエタニティのブランドは、ギンザタナカです。
値引き交渉も無く(好印象)、質の良い商品をリーズナブルな価格で販売して下さっていると口コミで見ました。
私よりかなり年上の男性の方が接客して下さいましたが、王家のベテラン執事を彷彿とさせました(本物の執事なんて知らないから想像のみで😅)。老舗店にふさわしく、完璧な接客でした。
その時購入したハーフエタニティは、他のブランドと比べても当時最安値の部類だったと思います。
「きちんとしたお店で、ダイヤが入っていて、できるだけ価格が抑えられているもの」を意識して調べました。
こちらのお店にして、本当に良かったです。
海外ブランドが半年ほどで石落ちした中、10年以上毎日、文字通り24時間着けていても、石落ちの気配すらありません。
しっかりと技術のある職人さんが製作を担当して下さったのだと思います。
 
その日の夜、旦那にお礼のメールをしたら、返事が返ってきませんでした。
今まで一度もそんな事はありませんでした。
余程頭にきたのでしょう。
 
今考えればですが、こんなにイライラして嫌々ながら買ってもらった婚約指輪が、本当に嬉しいでしょうか。
もっと、こう、仲睦まじく一緒に買って「これからも宜しくね♥」と、にこやかな雰囲気で指にはめてもらって、見る度に笑顔になって、というかニヤニヤが止まらなくなって、幸せを感じまくって、こんなに頑張って買ってもらった分のお返しは何にしようかな🎵とか嬉しい悩みができて…。
そんな理想とは程遠すぎる今の状態。
それでも私は…、
 
凄く嬉しかったです。
買ってもらえない、からの、まさかの逆転劇。
メインストーン無しの指輪でも、ダイヤが付いているだけで嬉しかったです。
 
私はこの時、まるっきり自分の事しか考えていませんでした。
突然大金をはたく羽目になった旦那の気持ちなどそっちのけで、本当に嬉しかったのです。
30歳を越えていたのに、とても幼かったと思います。自分で買うという選択肢も、当時は全く思い付きませんでした。
自分の希望する物を買ってもらえなかった悲しみはありましたが、すぐに払拭されたし、指輪を受け取りに行った後は、自分の手元を見る度に笑顔になりました。
とうとう、憧れの婚約指輪をもらえた、と思いました。
 
しかし…ただのわがままな子供ですこれじゃ。
はたから見ると私は、欲しい物を買ってもらえない、と泣き喚き旦那を思い通りにしようとしただけ。
旦那はそれがウザいから、愛も何もあったもんじゃなく、お金の無駄と思いながらただ買っただけ。
あれ…、書いていたら状況が整理されて悲しくなってきました…
 
それでも、あの時に勇気を出して婚約指輪の話をして良かったと思います。言わなかったら一生後悔していました。
そして、イライラしながらも買ってくれた旦那には、心から感謝しています。
誤解なきよう書いておきますが、今の所、後にも先にも、こんなに険悪な雰囲気になったのはこの時だけです。
旦那も、指輪以外の事に関しては😁、優しく穏やかで、家事育児にもとても協力的です。
 
世間から見たら私はただのわがまま妻ですが、自分だけでも、あの時良く頑張ったな、幼い頃からの夢が叶えられて良かったな、と思いたい。
そして、買ってくれた理由はどうであれ、私の夢を叶えてくれた旦那への感謝の気持ちを忘れないようにしたい。
 
ん?
旦那に、希望する物を買ってあげようと思わせられない私が悪い、私に魅力が無い、ですと??
そう思う方もいらっしゃいますよね(笑)全然そう思ってもらって良いです、思うのは自由!😆🎵
 
ていうか、圧倒的に話し合いが足りなすぎるよね、私達夫婦(笑)
そんなに欲しかったら、当日じゃなくて事前に勇気を出して言えってね。
若かった。(遠い目)
どなたかの反面教師になればと思います!
 
 
なんと、まだ終わりません。
いつ書けるか分かりませんが、舞台は11年後へ……