さつさつ | One On One

One On One

漢検一級の勉強。過去問題を取り上げています。
指定ないものは1級問題。
日々の出来事などについてはその都度削除。

20-③ 夜九時、戸を開けば、寒月昼の如し。風は葉もなき万樹をふるいて、飄々、サツサツ、霜を含める空明(くうめい)に揺動し、地上の影木と共に揺動す。其処此処に落ち散る木の葉、月光に閃いて、簌、簌、簌、玉屑(ぎょくせつ)を踏む思いあり。

 

夜9時、戸を開けると、冬の月が昼のように輝いている。風は葉を落とした樹々を震わせ、ビュンビュン、ピューピューと霜の張る水に映る月を揺らせ、地上の木の影も揺れている。あちらこちらに落ちている木の葉は月の光にひらめいて、さくさくさくと雪を踏んでいるかのようだ。

 

颯々

 

仰ぎ見れば、高空雲なく、寒光千万里。天風吹いて、海鳴り、山騒ぎ、ケンコン皆悲壮の鳴をなす。耳をそばだつれば、寒蛩リカに鳴きて、声、絶たんとす。風に向かいて、月色霜の如き往還を行く人の屐歯(げきし)戛戛として金石の響きをなすを聞かずや。月下に狂う湘南海の彼方に夜目にも富士の白くさやかに立てるを見ずや。

 

仰ぎ見ると、空に雲もなく、月光はかなたまで照らす。風は吹き、海や山は荒れて、天地は騒々しい。耳をすますとコオロギの鳴く声もとぎれとぎれである。風に向かって、月が照らす道を行く人のゲタの音がコツコツという響きをきくこともない。月光の下に荒れる湘南の海の向こうに富士山の姿も見えない。

 

乾坤

 

籬下

 

月は照りに照り、凩は弥吹きに吹く。大地吼え、大海哮り、浩々又浩々たり。

 

月はますます照り、こがらしはいよいよ吹いてくる。大地、海もゴウゴウとうなり、いっそう激しくなっていく。