20-① 然るに桑滄の変は人世数(さく)の免れざる所にして、維新の政を布かれたるより天下の大勢忽ち一変し、向のギギたる邸第は変じて細民のワイオクとなり、珍卉・名木を集めたる庭園は廃蕪して桑園・茶圃となり、諸侯に依りて衣食せる商賈職工は四方に雜散して復セキエイだも見ざるに至れり。
【訳】しかし、世の中の移り変わりの速さは、世間一般の人の運命の逃れられないところであり、明治政府が国を動かすようになってから、何もかも変わってしまい、昔の偉い人の立派な屋敷は、身分の低い粗末な家になり、珍しい花や、木々は荒れ果て、桑畑や茶畑になり、大名を頼りにして生活していた商人や職人はバラバラに離散して、いまはもうそのわずかな影すら見られないようになった。
矮屋↔邸第
巍巍
魏魏
隻影