「もうやめましょうよ
命がも“ったいだいっ!!!」
2幕あたま。
勢いづいて行進を続ける学生たちと一部の市民。
一度はバリケードを築くも、もっと良い場所があると言うことでバラして移動。
そしてエポニーヌの「On My Own」が静かに始まる。
この時、まさに大移動が行われている。
下手にハケた全員が、一度各々の場所へ帰り、最期の戦いへ向けて身支度を始める。
トリコロールカラーの布を腰に巻く者。
銃の具合を確認する者。
髪を結い直す者。
鏡に向かって志気を高める者。
誰も口をきかず、静かに、静かに、準備をすすめる。
アンジョルラスを信じ。
自分を信じて。
仲間たちが準備する間、グランテールには何もすることがない。
酒瓶を持ちフラフラといつもの場所へ。
バリケードに入る袖に一番近い舞台の一角。
ABCカフェでグランテールがお決まりの場所にしている丸テーブルと同じくらいの高さの場所。
薄明かりの中、酒瓶をトッと置き、ゆっくりと腰を据える。
落ち着く。
落ち着いていると、すっかり戦いの準備を終えたあいつらが、一人また一人と集まってくる。
ニッコリ笑顔で微笑みかけていく者。
真剣な眼差しでチラッと目を合わせていく者。
ハイタッチをしていく者。
しっかりと手を握っていく者。一心不乱、足早に通り過ぎていく者。
老いも若きも。
女も子どもも。
「On My Own」の隣で、みんな、吸い込まれるようにバリケードへ続く袖の中へ消えていく。
アンジョルラスもマリウスも見送り、グランテールは一番最後に入る。
そして最期の戦いに向けて上手への大集合が完了する。
見送りながらグランテールは考え、思う。
「やっぱり行くのか」
「なんで笑ってんだ」
「お前、他に楽しみたいことあるだろう」
「お前ら!死ぬかも知れないなんて微塵も考えちゃいないだろう!」
「お前ら、絶対死ぬんじゃねぇぞ」
でも誰も止められない。
誰にも声をかけられない。
誰も止められないから、ついていくしかない。
怖いから笑うしかない。
でも怖すぎて笑うこともできない。
アンジョルラスにいつか言ったっけな、
「今にわかるさ」
エポニーヌの「On My Own」の隣、アンジョルラスの声高らかに響きバリケードに押し寄せる仲間たち。
そして始まる負け戦。
ああ、なんとなく分かっていたさ。
アンジョルラスと、もう一度呑みながら熱く語り合いたかったなぁ。
そんなラスト9回。
1回1回が千秋楽。
