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【グランテール】
(Grantaire)

1807年生まれ




仏和辞書で調べてみると…

※役立たずのお婆ちゃん(失礼)
※無口な大口たたき(ちょっと不思議)



レーグル、クールフェラックと同い年。
自分の名前に引っ掛けて、いつも大文字のRを署名する。

秘密結社「ABC友の会」の活動拠点となっているカフェの隣のアパートに住んでいる。

舞台版ではブランデーが好きなグランテールだが、原作ではワインとアブサンが好物。
アブサンはフランス語でアプサント。アルコール分約70%。ニガヨモギを主な原料とした緑色の酒で、十八世紀に医師が創製した。元は薬酒だが、甘くて口当たりがいいのでたちまち広まる。麻薬に似た酔い心地から愛好者が増え、世紀末の退廃を彩り、中毒患者が続出して、1915年に製造禁止になった。

特技はサヴァートとショーソン(どちらもフランス流キック・ボクシング)、パリのお得な店ガイド、ダンス少々、棒術は達人級。
しかし、とんでもなく醜い男で大酒飲み。道楽者で博打と女が好きで、いつでも酔っ払っていた。
そして何も信じないようにしている懐疑家。
そんな彼が唯一賛美し、尊敬し愛していた狂信の対象がアンジョルラスである。

「彼にはアンジョルラスが必要であった。彼は、はっきりと理解もできなかったし、自分で納得しようとも考えなかったが、この純潔で、健全で、確乎として、剛直で、厳格で、素朴な本性が、彼を魅了していたのである。」
以上、本文からの引用。

どんなに冷たく突き放されても、アンジョルラスの傍しか居場所を持たず、拒まれてはまた帰って来て「なんて綺麗な大理石だろう!」とアンジョルラスを表した。


バリケードを築いた6月5日。
舞台版ではバリケードでみんなと一緒にいるグランテール。
だが原作では…。


アンジョ:「グランテール!どこかへ行って酔いをさましてこい。ここは陶酔の場所であって酔っ払う場所ではない。バリケードの名誉を汚すな!」

グラン:「僕が君を信じていることは知ってるだろう。」

アンジョ:「行っちまえ。」

グラン:「ここで眠らせてくれ。」

アンジョ:「よそへ行って寝ろ。」

グラン:「ここで眠らせてくれ…死ぬまで。」

アンジョ:「グランテール、君には、信じることも、考えることも、望むことも、生きることも、死ぬこともできない。」

グラン:「今にわかるよ。」


こうしてアンジョルラスに追い払われたグランテールは一昼夜眠り続ける。


そして運命の6月6日。

形勢不利は火を見るより明らかな中、最後の戦いが始まる。

マリウスが銃弾に倒れ、アンジョルラスは生き残った数人を連れてバリケードの裏にあるコラント亭に退却する。
12人の兵士が店の2階に現れた時、そこにいるのはアンジョルラスだけだった。
だが、いよいよ銃殺が行われようとした時、「共和国ばんざい!俺も仲間だ。」と誰かが叫んだ。
グランテールがついさっき目を覚ましたのだ。


彼は「共和国ばんざい!」を繰り返し、しっかりとした足取りで広間を横切り、銃口の前に行ってアンジョルラスの傍に立った。

「二人を一発でかたづけろ」と彼が言った。
そして、静かにアンジョルラスの方を向きながら、そのアンジョルラスに彼は言った。

「ゆるしてくれるか?」

アンジョルラスは微笑みながら彼の手を握りしめた。



その微笑みが終わらぬうちに、銃声が轟いた。





こうして、無口な大口たたきの役立たずのお婆ちゃんの、酒と博打と女が大好きな、どうしようもない一人の酔っ払いの、グランテールという若者の人生は、愛する男と共に幕をおろした。




1832年6月6日没
享年25才







歴史あるこの作品のファイナル公演に出演できる感動と、この時期に演劇人として舞台に立てるということの意義と責任をしっかりと受け止めて。


グランテールという男、不可解で不思議なヤツですが、淋しがり屋の臆病者なんですね。

どこの国にも、どの時代にも、こういう不器用な男はいるんです。



「レ・ミゼラブル」、いよいよ、あと一週間でプレビューの幕が上がります。



千秋楽を無事迎えられるよう、常に全力で、このどうしようもない愛すべき普通の男と生死を共にしたいと思います。



命あることに感謝し、祈りを込めながら。






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