ペンと墨汁2、バクマン | 渡辺やよいの楽園

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小説家であり漫画家の渡辺やよい。
小説とエッセイを書き、レディコミを描き、母であり、妻であり、社長でもある大忙しの著者の日常を描いた身辺雑記をお楽しみください。

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> 久しぶりで一人で漫画描いている。 
 最近はパソコンに取り込んで仕事するので、主線やバックなんかみんなサインペンとかボールペンで描いてたんだか、どうもしっくりこない。線が単一で私の絵にならない。
 思い切って、ペンと墨に戻って描いてみたら、これがするするいく。
 太い線も細い線もペン一本で自由自在。
 ああ、やっぱりこれかぁ、アナログなんだよなあ、私は。
 でも、ずいぶん忘れていたこのペンの感じが、すぐに手になじむのがうれしい。
 
 と、先日書いたのだが。
 その後日談。
 
  数日前から、娘が私の仕事机をしきりに気にしている。
  机の上のペン軸などをいじっている。
 「昔は漫画はみんなこうやってペンと墨で描いてたんだよ」
 と、ペンを使ってみせてやると、目を丸くして
「すごーい。バクマンみたいだねー」と、興奮する。
(いやいや、お母さんリアルに漫画家なんですけど…)と、思うが、紙にペンで絵を描くという行為は、なにかとても魅力的なのだ。
「やってみる?」と、聞くと
「やるやる!」と、大よろこび。
 私は主線もバックもすべて丸ペン一本で描いてしまうが、丸ペンはいささか使いにくいペンなので、娘にはかぶらペンを渡す。
「これで描いてごらん。手塚先生もこのペンで漫画描いてたんだよ」と言うと、手塚先生神様の娘は大興奮。
 必死に机に向かう娘。
「ああー、難しいねー」と言いながらも、机に張り付いている。

 私も初めてペンと墨で漫画を描いた時には、なんかプロになったようで興奮したなぁ、と思い出す。
 今はPCでタブレットで漫画描く人も多い。が、バクマンの世界じゃないけど、手でペンと墨でがりがりと世界を生み出していくって、とてもすごいことだなあ、と改めて思うのである。