二十歳の頃 | 渡辺やよいの楽園

渡辺やよいの楽園

小説家であり漫画家の渡辺やよい。
小説とエッセイを書き、レディコミを描き、母であり、妻であり、社長でもある大忙しの著者の日常を描いた身辺雑記をお楽しみください。

 昨日雨の中、思うところがあり、国会図書館に行って、25年前の自分のデビュー作を読んできた。
 もうすっかり内容など忘れてしまっていたのだが、探し出してページをめくって読んでいくと、稚拙な絵や話はともかく、今の私のすべてが、そこにあったことに驚愕した。

 支配的な親に人生のレールを敷かれた青年が、親に何カ月かの猶予をもらって、小説を書こうとしている、彼は実は小説家になりたい。しかし、時間をもらったものの一行も書けずにいる。そこに少女が恋人を捜して飛び込んでくるのだが、なんとその子のお腹はぽんぽこ、つまり妊娠しているのだ。その女の子と同居する羽目になって、暮らすうち、たくましく生きる少女と心が通じ、結局青年はその女の子とそのお腹の子供を引き受ける決心をする。そして、小説の最初の1行を書き始めるのだ。
 学園ラブコメディ一辺倒の25年前にしてはかなり変化球。
 当時、萩尾望都、大島弓子、竹宮恵子などが出始め、少女漫画に変革が起きる直前だったので、こんな異色作も取り上げてもらえたのかもしれないが。
 支配的な親、小説家志望、すでにセックスを知っている少女(エロス)……私の原点は処女作にすべてあったのだ。

 道に迷って模索しているはたちの私がそこにいた。
 25年後の私は、その迷える子羊の私に、声をかけてやりたい。
 大丈夫だよ、ここまで来たよ、大丈夫だよ、負けるな、がんばれ、ここまでおいで。

 そしていまだに、道に迷って模索している状態に変わりはない。25年先の私が現れて(でももうその時は生きてないかもしれない……)「大丈夫だよ、がんばれ、ここまでおいで」と、励ましてくれるといいのにな。