先輩方の圧に圧倒されて早5分が経った
大丈夫ですというワードを何回言っただろうか
そろそろ圧にも断るのも疲れ始めたところだ




由「本当に大丈夫です。終電あるので行きます」


理「ここの最寄りから由依の最寄りまで20分くらいかかるでしょ?駄目。」


森「だぁからぁ〜森田の部屋にっ」


土「もう皆降参しよ?こういう時間が勿体ないからさ〜皆で理佐の家行けばいいじゃん」


理「私が入れるのは由依だけだから。皆出禁にしたでしょ」


田「もう〜酔ったまま寝た事そんな気にしとるん?」


理「酔ったままが駄目なんじゃなくて、お風呂に入らないまま寝たのが駄目なの」




時計を見ると、今から駅に走ったところで終電は間に合わない
もう諦めて誰かにお世話になろう
そう伝えると先輩達が話し合い始める
何やらじゃんけんをしているようだし……



理「やった〜〜!!!」


森「うわ……」


田「理佐がこんな喜んでるの初めて見た」


藤「……喜ばれるとムカつくな、、」


土「由依ちゃん今度泊まりに来てねぇ、、」





どうやらじゃんけんで私は理佐さんの家にお世話になることになったらしい
初めて見る5歳児のように喜ぶ顔に少しだけ可愛いとはにかんでしまう




由「理佐さんよろしくお願いします」


理「うん、おいで」




理佐さんは先輩達を送っていき自宅へと帰る
立派なマンションに、流石だなと尊敬の意を称してしまう
さっき耳打ちで保乃さんに言われた言葉

〝理佐は綺麗好きやから、玄関で着替えさせられるしすぐお風呂直行やから。飲み物とか零したらホンマにあかんからな〟

その言葉をしっかりと胸に留めて案内された部屋に入る


由「お邪魔します」


理「どうぞ〜あ、」


由「あの保乃さんから少しだけ話聞いたので……ここで待ってます」


理「ごめんね……ちょっとまってて!」





お風呂のスイッチを押して、何処かに着替えを取りに行く
玄関から伝わる綺麗な部屋に整頓された家具たち
白を貴重とした部屋で汚してしまいそうで怖くなる
これが零したらホンマにあかんという意味なのだろうか

着替えを持たされるなり、お風呂に案内され素直にお風呂に入る
人の家のお風呂なんて緊張以外の何物でもないけど、先輩を待たせる訳にはいかない
戸惑いを捨てて、素早く入浴を終えた
理佐さんが用意してくれた服は、少し大きくて裾を少しだけ捲る



由「お先にすみませんでした、」


理「ゆっくり入ってていいのに〜」


由「いや、温まりました。あのドライヤー、、」


理「あ、ごめん……こっちおいで」




再び洗面台に連れていかれる
ドライヤーを出して渡してくれるのかと思いきや、コンセントを繋いで待っている
これは乾かすよという事なのだろうか



理「乾かしてあげる」


由「いや……流石に」


理「いいから〜」



強制的にスイッチを入れられ、強風を当てられる
すみませんと思いつつ乾かしてもらうことにした
人に乾かして貰うなんて、美容室以外体験することがないから少しだけ緊張する
ぽつりと声が聞こえた気がした。聞き返せずに、よし!という声とともにドライヤーは切られた




由「ありがとうございます!私も理佐さんの髪乾かします」


理「いいよ」


由「乾かしたいんです!上がったら呼んでください」


理「ふふっ、わかったよ〜」




そう言って理佐さんをお風呂に送り出したものの、時計は既にもう日付を跨いでいる
いつもならこんな事ないのに、眠い……
いや、先輩の家で先輩より先に、しかも理佐さんの家で寝るなんて有り得ない
他の先輩だったら気を許して寝ていたはずだ。
でもあの理佐さんの家だ。許されない
ソファだから寝てしまいそうになるんだ
そう思って床に座り直す



頭に心地よい感触を感じて慌てて目を開ける




由「ん……、、あっ理佐さんっ」


理「眠かった?寝てよかったのに」




既にお風呂上がりという理佐さんの姿は、きちんと髪が乾かされていた
なんなら飲み物を口に運んでいる始末だ
しまった……やらかした
理佐さんのお家で家主より先に寝たという失態にプラスで髪を乾かすと豪語しておいて放ったらかしにしてしまった




由「すみません……」


理「ん〜良いんだよ。眠くなる程この家落ち着いた?」


由「それはとても……」


理「なら許す。ベット使っていいから寝な?」


由「いや、私はソファ……いや床でいいです」


理「駄目だよ。後輩ソファとか床とかで寝かせるわけないじゃん」


由「それ私からしたら、先輩をしかも家主をベット以外で寝かせる訳には行きません」


理「じゃあ一緒にベットで寝る?」


由「え」


理「そうすればお互い良いよね。よし決定」


由「いや、あの」


理「あ〜シングルだから少し狭いかも?でも由依細いし平気だよね」


由「ちょ……話を」


理「寝室行くよ〜」





リビングの電気は消され、寝室に行く以外選択肢は無くなった
いや待て。理佐さんの家とはいえなんで女の先輩相手に一緒に寝ることを躊躇してるんだ?
大学時代、友達を泊めて一緒のベットで寝たりしたじゃないか
そうか。理佐さんにとったら私もそんな感覚なんだろう
何を戸惑っている?いいじゃないか、家主が許可してくれてるんだから




理「おいで」


由「……失礼します」


理「んん、ちょっと狭いね。ごめん」


由「私もっと端寄れます」


理「ちょ……壁じゃん、ほらこっち来て」





何理佐さん相手にドキドキしているんだ?
これがひかるさんや保乃さん達だったら?こんな緊張感はあっただろうか
……いや、これは理佐さんのお家の空気感に感化されて理佐さん自体に触れる事さえ汚してしまいそうで怖くなっているんだな
そうだよ、変な緊張感なんて捨ててしまえ



目を閉じている理佐さんを至近距離で眺める
まつげ長いな、肌綺麗だな、あ、ホクロある
そんなことを思っていたら、急に理佐さんの目が開き目が合う


_______________ドキッ。



理「何見てるの〜」



悪戯っぽく笑う理佐さんに不覚にもドキッとしてしまう
これじゃあまるで恋してるみたいじゃないか
ドラマに見ていたあの感情みたいじゃないか
いやいや……ナイナイ



由「理佐さん狡いです」


理「ん?狡い?」


由「駄目な小林って怒ってた癖に、今日は表情豊か過ぎません?怖がったり喜んだり……」


理「嘘……自然にでてた」


由「ギャップについていけないですよ、、」


理「いつも由依に申し訳なかった。あんなにキツい言い方しか出来ないから」





指導しなきゃって事で頭いっぱいで、言い方にまで気が回らなかったんだよね
保乃達に言い方キツいよって言われて気づいた……
なんてしゅんとして言うから今までの理佐さんが別人に思えてきた
確かに時々刺さるけど、、、理佐さんが悪いわけじゃないのに。



由「理佐さんは悪くないです。覚えの悪い私が悪いんですよ」


理「だって……泣かせた。私の指導が悪いせいで由依ができないって言われるの嫌だったの。だからつい厳しくしちゃったけど、泣かせたら意味ないよね」


由「あれ本当に理佐さんのせいじゃ……」


理「由依が気づいてないだけで、心はちゃんと傷ついてたんだよ。謝って済むことじゃないけど、、ごめんなさい」


由「いいんです。あの件がなければ今日、理佐さんが可愛くていい人だって知れなかったので」


理「ほんとに……いい子すぎるよ。」


由「理佐さんそんな顔しないでくださいよ〜、」


理「ん……由依は偉いね。」


由「ふふっ、急になんですか、、、」


理「だって由依が……」




理佐さんに振り回されて目が冴えてしまった私と裏腹に、先程からずっと眠たそうにしていた理佐さんが何かを言いかけた瞬間、すっと意識が落ちてしまった
眠かったからあんなに素直だったのだろうか
少しだけ幸せに包まれながら瞳を閉じた






由「すみません送って貰って」


理「いいのいいの、でもここで良かったの?」


由「はい、本当にありがとうございました」



お昼になる頃、理佐さんの家を出て駅まで送って貰った
手を振る理佐さんを見送り私は先程できた約束の地に足を進める




田「あ!こっちこっち!」


由「すみません遅れて」


森「いいのいいの〜」


藤「理佐に勘づかれなかった?」


由「大丈夫です!」


土「じゃあ、、行きますか」




保乃さんから、由依ちゃんのお誕生日を祝いたいと急に連絡が来て最初は断ったものの、お祝いしてくれる気持ちを断るのも……なんて思い快諾した
でも理佐さんは連れてきちゃ駄目なんて言うから一瞬ブラックな事を想像したが違った




田「理佐もほんまなら連れてきてあげたいとこやけど、昨日由依ちゃん独り占めしたからな〜」


森「理佐、私達が由依ちゃんの誕生日を先に把握して、祝ったって言ったらどんな反応するかな」


藤「理佐ってつい意地悪したくなる」


土「わかる!きっとうちらの前ではポーカーフェイスで乗り切るんじゃない?」


田「ふふっ、今度ちゃんと皆でパーティしような」


由「嬉しいです、祝い事好きなので」


森「森田が主催ね〜」


藤「あっずるい。いいとこ取りや」


土「ひかるがお金も出してくれるのかな?」


森「うっ……やっぱやめる」





5人でご飯を食べてその日は解散になった
帰宅後すぐに、理佐さんも含めた6人の連絡先のグループが保乃さんによって作られていて用意周到だななんて思いながら参加した
今日の隠し事が明日どうなるかも知らずに眠りについた










____________________________________________





今回の投票はお休みです
長くなっちゃうので一旦投票無しで切りますごめんなさい🙇‍♀️