あれから数日たったある日、廊下で見知らぬ女の子に声をかけられた。



「藤吉先生とどういう関係なんですか?」


由「えっ……どういう?」


?「ねえ保乃ちゃんだからきっと誤解なんだよ……」


保「いや誤解なんかやない!藤吉先生のあんな顔見たことない!」


美「あんな顔?」


保「貴方と2人でおる時に藤吉先生笑っとった……」



2人でいる時を思い返せば、絶対に渡邉先生の話をしてた時だ。
自分でも笑うの珍しいというか初めて見たけども、それだけで勘ぐっちゃうものなのか?




由「笑ってたかもしれないけど……夏鈴先生とは何も無いし」


保「夏鈴先生!?!?」


?「保乃ちゃん声大きいよっ」




保乃ちゃんとやらの隣で小柄な子が慌てて止めている
友達なのだろうか。
だとしたらこの子に話をした方が早いかもしれない



「何揉めてんの」



頭の上に気配を感じたら後ろから聞き馴染みのある声が聞こえる。
振り向かなくても誰だか分かってしまうし、鼓動が早くなる



由「渡邉先生……」


保「りっちゃんにまで手出しとるん……?見かけによらず嫌な女やな……」


理「何りっちゃんにまでって」


保「りっちゃんとも仲良くして、その上藤吉先生も出し抜こうとしとるんよ!この女!離れた方がええで」



知らないうちに誤解は増えるし、悪口言われるし……
きっと保乃ちゃんは夏鈴先生が好きなんだろうけどさ
誤解くらいとかせてよ……



理「そんな事ないよ?」


保「へ?」


理「由依ちゃんは私にゾッコンだもんね?」


由「っ由依ちゃん!?」


理「ね?ほら否定しない」


美「そうやったんやぁ……!あっじゃあみい土生ちゃんとこ行ってくるわ〜!」




いつもの小林さんの呼び方から由依ちゃん呼びの方に反応してしまって、ゾッコンへの否定が出来なかった
渡邉先生は私が好きじゃないって思ってるハズだよね?もしかしてバレてる?
これってやっぱりからかわれてる?
なんて脳内会議している間に、いつの間にか夏鈴先生が来ていたみたいだ




理「夏鈴ちゃん〜この子が夏鈴ちゃんのことす……」


保「わーわーわー!!りっちゃん!!」


理「へへへ〜」


藤「なんやったんです?急に呼び止めたのに」


理「いやぁ揉め事してて」


藤「はぁ……私になんの関係があるんです?」


理「あっ!そうだ!夏鈴ちゃんと保乃ちゃんでこれコピーしてきてよ」




嘘くさすぎる演技に夏鈴先生もため息をついていた
保乃ちゃんは嬉しそうだけど……




藤「嫌です。なんで夏鈴と田村さんがそんな雑用……」


理「だって体育祭のプログラムだよ?いち早く見れちゃうんだよ?特権じゃん」


藤「それ夏鈴には関係な……」


保「藤吉先生行きましょう!」


藤「えっ?」


保「こういう時のりっちゃんは面倒なので!ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」


理「ん〜?保乃ちゃん?」


藤「はぁ……それ貸してください。何枚ですか?」


理「700くらい刷っといて〜!後で差し入れ持ってくからお願いね」


藤「田村さん行こうか」


保「はいっ!」






誤解を解こうとする前に、保乃ちゃんはルンルンで夏鈴先生と印刷室へ行ってしまった
あ……すっかり存在を忘れてたけど……



由「えっと……保乃ちゃん?行っちゃったけど」


?「あっ……!すみません。保乃ちゃんが」


由「いいよ全然〜。きっと夏鈴先生が好きなんだよね」


?「はい……だからこそ藤吉先生が他の方と笑ってるの見て嫉妬しちゃったみたいです。」


由「ふふっ可愛いなぁ。あっ名前は?」


森「森田ひかるです!1年A組です!あっあっちは田村保乃ちゃんです」


由「ひかるちゃんか〜よろしくね。2年A組の小林由依です」


森「由依さん……!よろしくお願いします!あ……部活があるので失礼します!」


由「うん頑張ってね〜」




初めて後輩の子と話したかも……
ひかるちゃん小柄で目が大きくて可愛いなぁ〜
礼儀正しくていい子だし。



理「ねえ忘れてない?」


由「え?」


理「ねえ放課後用事ないよね?」


由「ない……あ、アリマス。」


理「嘘つかないでよ!忘れた罰プリント閉じの刑だ」


由「嫌です面倒なので。」


理「駄目です拒否権ないです。聞きたいこともあるし」


由「聞きたいこと?」


理「なんで夏鈴先生って呼んでんのさ……私の方が仲良いよねぇ!?なんで私だけ苗字なの!りっちゃんとか理佐って呼んでよ〜」




初めて上手に立てた気がする。
ああそうか。今まで見てきた恋愛ドラマの駆け引きってこういうことなのか
今までなんで駆け引きをするのか理解できなかったけど、相手の気持ちが少しわかる気がして相手の事をさらに好きになれるんだ。



由「ふふっ渡邉先生〜」


理「ねえヤダってば!」


由「しょうがないからプリント閉じの刑受けてあげますよ。理佐先生」


理「ねぇやっぱり私のこと好きだよね?」


由「好きじゃないですよ。渡邉先生」


理「ねえ〜理佐先生って呼ぶんじゃないの?」


由「なんの事です?」





今まで同性愛だとか、生徒と教師だとか。
色々な壁を気にしてきたけどもうどうだっていい
世間が睨みつけようと今なら胸を張って言えるだろう






渡邉先生が好きだ__________。