先週に引き続き、世界三大投資家、ジム・ロジャーズ氏との共著『大暴落 金融バブル崩壊と日本破綻のシナリオ』(プレジデント社)を紹介する。おかげさまで通販サイト「アマゾン」でもベストラセー1位(財政学)となり多くの人に関心を持っていただいている。

前回はなぜ大暴落に見舞われるのかを解説したが、今回は資産を守る方法、被害を最小限にする方法に触れたい。

ジムさんは最善の資産防衛法として金と銀を挙げる。しかし比率は、ポートフォリオの5~10%程度で「保険感覚」で持つというアドバイスだ。いずれ来る危機の時は、安全資産として「米ドルがさらに買われる」と予測し、よって「ポートフォリオの大半は米ドルだ」と明かした。

昔は、日本円が安全通貨といわれたが、異次元の金融緩和で、政府や日銀のバランスシートは大きくゆがめられ、今や安全資産とはいえない、そこは2人とも一致した。資産を守る方はやはりドルということになる。

私の今後の見通しは、日本円は「暴落する」、日本株は「輸出産業やインバウンド産業の一部は復活するが、全体としては暴落する」、不動産は「暴落するが一等地の価格は戻る」、国債は「暴落する」。一方、米ドルは「上がる」、米国株は「一度は下がるがいずれ元に戻る」、米不動産は「一度は下がるがいずれ元に戻る」、米国債は「不況が来て一時的には下がるが、比較的早く元に戻る」とみている。

ジムさんは、「今後1年程度の間に大きな経済ショックが待ち構えていると考えている」という。日本破綻を避ける方法についても意見交換したが、ジムさんは財政健全化し、人口を増加させることが、日本が立ち直る前提条件になるという。

日本の国会議員は財政健全化に向けて本気で動こうとしない。今回の衆議院の補選を見ても、大衆迎合(ポピュリズム)合戦だ。人口減についても移民政策には各党積極的ではない。結論、日本を再建するには、国民に耳の痛いことも言える、政治家が必要だということだ。無論、ジムさんも私も予言者ではない。

しかし10年後、この本を読み返してもらったときに、日本は破綻的危機を迎えずに歴史は刻まれているだろうか。そして大事なのは日本が破綻しても、そこからいかにして復活するかだ。ジムさんは、戦後日本人は、「勤勉性」でこの国を再建してきた。その国民性を今失っているのではと危惧していた。

ワタミは来月創業40周年を迎える。仮に大暴落があっても、企業を守り、発展させていく経営を意識している。ここから10年、経営者として最大の正念場と考えている。ちなみに、ジムさんは私の恩師つぼ八創業者石井誠二さんと同じ年だった。私の人生、不思議と巡りあいたいときに、巡りあいたい人と出会える、運の良い人生に感謝している。

 



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より