物流の「2024年問題」を前に、ワタミはローソンとの協業による配送の実施を発表した。

ローソン側は昨年12月から順次、二酸化炭素(CO2)排出量削減、コスト抑制につなげるため、チルド・低温商品の配送回数を3回から2回に切り替えている。一部の配送車に非稼働時間が生まれることから当該時間帯の有効活用を検討しており、協業先を探していた。

配送する商品の温度帯や、シェアリング可能な時間帯がワタミの宅食と合致したため、まずは東京都や埼玉県の営業所を対象に協業を開始する。

業界の垣根を越えた提携となるが、企業同士の提携は「ウィンウィン」だけではうまくいかないこともある。それぞれの会社の現場はこれまでのやり方や、自分の立場を主張することがある。

大事なことは「ウィンウィン+大義」だ。今回の提携は、CO2削減や、地球温暖化対策につながるという「大義」がある。「大義」に納得すると、現場はひとつの方向に向かう。宅食とコンビニ、お弁当ではライバルだが、地球のためには手を取り合う関係ができた。

こうして、民間企業は課題解決に向けて工夫を重ねるが、国の方は相変わらず工夫が感じられない。

今週にも24年度の一般会計予算が成立する見通しとなっているが、歳入では所得税約18兆円、法人税が約17兆円とされているが、これらを合わせても歳出の社会保障費約38兆円を賄うことができない。

国の借金がかさむ中、歳入面では新たな借金となる公債費に大きく依存する状態が20年以上も続いている。財政状況が厳しい中で、このような予算を組むことは理解できない。

日銀は19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除を決めた。しかし、日銀の当座預金のうちマイナス金利が適用されているのはほんの一部だ。

さらにYCC(イールド・カーブ・コントロール)をやめるといっても、長期国債を月6兆円購入するといい、金利を押さえつける姿勢は変わらない。何も変わらないと世界の投資家からも見透かされて、それが証拠に発表後、円高でなく円安が進んだ。

それよりも、金利が本格的に上昇したら、日銀は債務超過になり、政府は国債の利払いが増え、予算が組めなくなり財政破綻となる。それを回避するためには、財政再建を行う必要があるのに、来年度予算にはその意思は感じられない。何より政治家自ら率先垂範しなければ、財政再建ははじまらない。

領収書のいらない旧文書交通費など、政治資金の特権を廃止し、議員定数の削減をして、はじめて国民に歳出削減をお願いできる。野党も自民党の裏金追求はしても、政治家特権の廃止まではする気はない。民間企業は、ライバル企業であっても大義のもとに協業する。国会議員にも、財政再建という大義のもと与野党協業してほしいものだ。

 



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より