能登半島地震の被災地で、長年親しくしている富山県氷見市観光協会の松原勝久会長に、ニッポン放送の番組で話を聞いた。

氷見市では避難者の二次避難も進み、現在では被害の大きかった輪島や珠洲方面に向かう物資や人のベースキャンプのような役割を果たしているという。

氷見市は立山連峰を望む風光明媚(めいび)な温泉郷の観光都市だ。観光客が戻ってこないと経済が回らない。

「旅館やホテルは予約自体がキャンセルになってしまい、数億円の売り上げが消えた。昨年末からコロナ禍融資の返済が始まり、延期や追加融資にも迫られている」と松原さんはいう。

少しでも経済をまわすお手伝いのために、ワタミでも氷見うどんをはじめ被災地の食材をたくさん仕入れて応援メニューといった形で販売していくことを約束した。

さらに、ワタミと取引の深い、石川県七尾市にある和倉温泉の名旅館「加賀屋」からは休業が続き、再開の目途が立っていないと連絡を受けた。旅館ではお菓子や乾物をはじめ、連日たくさんのお土産品が売れていた。それが休業で販売できないと、お土産を作る会社、その会社に食材を卸している会社と、連鎖的に地元業者が困ってしまう、力を貸してほしいと相談された。

取引業者への配慮に奔走する姿勢はさすが日本一と称される旅館だ。もちろん喜んで引き受けた。加賀屋のお土産を仕入れて「ワタミの宅食」のお客さまや「和民のこだわりのれん街」で、応援販売することを決めた。

政府与党は、震災対応に注力すべき時なのに、派閥の政治資金パーティーの問題で、岸田文雄首相は自民党内に「政治刷新本部」を立ち上げ、そちらにもエネルギーを費やしている。派閥解消には賛成だが、民主主義は数の論理であり、グループなどに名前を変えて存続していくだろう。

それより本当の刷新は、お金に関する特権の廃止であり、民間の常識から2つを強く提言したい。

一つは、政治資金団体の会計責任者を政治家にすることだ。会計責任者は企業で言えば経理部長だ。企業が脱税した場合は社長が逮捕される。会計責任者にすべての責任を押し付けて幕引きを図れる仕組みはあり得ない。

もう一つは、政治資金団体の特権を廃止し一般社団法人化することだ。青色申告で納税もすべきだ。脱税のような裏金の流れが、収支報告書の修正だけで済んでしまうのは特権の極みだ。インボイス制度もはじまり国民は領収書会計が一段と厳格化された。それなのに、国会議員だけ新幹線乗り放題や、領収書のいらない経費があるのは理解されない。仕事に使った分だけが経費として認められる、それが常識だ。

しかし、ここまでの刷新となると野党も既得権を守りたく反発するだろう。財政赤字の中、国民は真面目に納税義務を果たしている。その税金の使い道を決めるのが政治家だ。裏金行為を行い、会計は自分の責任ではないという政治家には、この国の会計も任せられない。

 



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より