5日に東京・大井町駅前に新総合居酒屋「和民のこだわりのれん街」をオープンした。

総合居酒屋の定義は「何でもある」だったが、新総合居酒屋のコンセプトは「こだわったものが何でもある」だ。ワタミが展開する7つの専門店ブランドが1つのお店で楽しめる。薩摩牛の焼肉「かみむら牧場」、すしの「すしの和」、四川中華「ワンズガーデン」、炉端焼きの「銀政」、さらに居食屋「和民」の復刻など、バラエティー豊かな「本格料理」が味わえる。

今回、何よりいちばんこだわったのが、店仕込みの手作りに戻したことだ。さらに全メニューに有機や、産地、季節感といった、こだわりのストーリーがある。物価高、インフレ時代に単純に値上げするだけの飲食店は淘汰(とうた)されていくだろう。上手に値上げし、お客さまに「少し高くてもいい」と思って頂ける工夫が重要だ。

店名に「和民」とつけたのは、原点回帰の意味がある。手作りで安心安全で、有機食材を使ったアイテムで、サラリーマンだけのものだった居酒屋文化を家族にまで広げた、それが「和民」だった。もう一度その強みを意識していく。この店を旗艦店と位置付け、今後、横浜、大阪、名古屋と大都市圏に1店舗ずつ出店していく計画だ。

アフターコロナ、ライフスタイルが変化し、深夜の客が減った。その変化対応策として、この店では、ランチで本格そば屋を営業する。ワタミファームで栽培した有機のそば粉を使った、こちらも「こだわりのそば」だ。

さらに、この店はワタミグループのSDGs(持続可能な開発目標)モデル店だ。いまだなかなか知られていない、ワタミの取り組みを表現した。店舗の電力は、グループ企業「ワタミエナジー」を使い、再生エネルギー100%を実現。箸やトレーなどはワタミが管理する森林再生の間伐材を活用する。食品廃棄物は年内にリサイクルループを実現する予定だ。

オープンの10月5日は、私の64歳の誕生日だった。久しぶりの居酒屋のプロデュースに、私は「人生には、居酒屋が必要だ」と断言したい。この新総合居酒屋で、日本の居酒屋を変えていきたい。今回のお店では客単価を400円ほど上げさせていただいた。それでも、薩摩牛やマグロをはじめ同じ素材を使う他社の専門店より安い値付けを意識した。レセプションのお客さまからは「おいしかった、安かった」という言葉をいただけた。

記者会見で、いちばん注目されたが、「単価を上げた分は、社員の賃金を上げていきたい」と語った。

政府の経済好循環というかけ声は、経営者から見れば、実態をぜんぜん理解していない。

しかし、ワタミなりの挑戦で、外食企業の経済好循環を実現していきたい。コロナの次はインフレ。試練があるほど燃える。誕生日に幸せと感謝を実感している。わが人生「こだわりの経営」を見せていきたい。

 


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より