私が主宰する経営塾「渡美塾」にも、「ゼロゼロ融資」の返済が始まって経営が苦しいという中小企業経営者からの相談が多く寄せられるようになった。ゼロゼロ融資は、コロナ禍の企業倒産抑制には効果を発揮したものの、赤字の「ゾンビ企業」まで延命する結果を招いてしまった。今後、倒産件数が増えていくだろう。

 

さらに、コロナの特例措置だった、社会保険料の納付猶予も期限切れし、未納分の支払いが始まった。帝国データバンクによると、社会保険料や税金の滞納が引き金になった倒産は今年1~7月に65件と、前年同期の2倍に増えている。

 

私のもとに寄せられる相談の多くは、売り上げや利益から返済に資金をまわすと、経営者自身の報酬がほとんど残らないという声だ。それがこの先、10年近く続くと思うと気持ちが折れてしまうという。

 

私はそうした相談に、たとえ手取りゼロでも1~2年は地道に返済を続けるようアドバイスしている。その理由は、返済を続けることが信用の積み重ねになるからだ。銀行は誠実さを見ているものだ。その信用を糧に1~2年後に、銀行に追加融資をお願いし、攻めの事業拡大を目指すべきだろう。経営は格闘技であり、守りの姿勢だけでなく、強い理念とそれを実現するための明確な攻めのビジョンが求められる。

 

渡美塾には、現在約900人の経営者が入塾しているが、それを1万人規模にしたいと考えている。国会議員時代から提言している通り、中小企業が元気になれば日本経済も成長する。塾の最大の特徴は、個別経営相談だ。私がPL(損益計算書)とBS(貸借対照表)を読み込んで経営課題に、私ならこうするとアドバイスしている。

 

私自身、ワタミを創業し1000億円企業にするまでの間に、それぞれのステージで、たくさんの失敗や経験をしてきた。その経験を教科書としてほしいと思っている。さらに、報酬ありきの経営コンサルタントでないから、ときに相談に対して叱ることもある。それが刺激や学びになって、奮起できたという声も多い。

 

いろいろと質問も受け、私も刺激を受けている。先日は「もし今20歳だったら、何の事業で起業するか」という質問を受けた。迷わず「農業」と答えた。ワタミでは農業に取り組み、25年になる。今こそ円安や農家の高齢化で農業のビジネスチャンスは広がっていると考える。

 

ワタミの居酒屋「ミライザカ」「鳥メロ」では今月、ワタミファームの有機レタスのキャンペーンを実施している。有機レタスには芯に独特の甘みがあり、ビタミンや食物繊維など栄養も豊富だ。

 

今回の有機レタスのキャンペーンを担当する、マーケティング部の女性社員が「店長たちと実際に農場に行ってレタスの収穫を行い、自分の言葉で商品の魅力を語れる販売促進に取り組みます」と言った。とてもいい姿勢だと褒めた。自分が経験した言葉が、いちばん説得力がある。

 

 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より