ワタミが支援する公益財団法人「みんなの夢をかなえる会」では、「起業家の甲子園」ともいえる高校生を対象としたビジネスモデルコンテスト「高校生みんなの夢AWARD(アワード)」を毎年主催している。4回目となる今年は全国から600人を超えるエントリーがあり、決勝に進んだ10人のプレゼンテーションが、8日に国立オリンピック記念青少年総合センター大ホールで行われた。

主宰・審査員長である私としては、高校生たちに日本が抱える社会問題を見つけ出し、ビジネスという切り口から解決法を提案してもらいたいと願っている。回を重ねるごとに参加者が立案するビジネスモデルからCSV経営(社会問題の解決と自社の利益の両立)の姿勢が見えてきて、大きな手応えを感じている。

グランプリには郁文館高校3年生の「水上飛行機を用いた新たなモビリティで、離島の交通・物流の課題を解決する」というビジネスモデルが選ばれた。本土から100キロから200キロ離れていて輸送効率の悪い離島に向けての輸送手段として、水上飛行機を活用するというアイデアだ。

燃料費が高騰していることもあり運用コストがネックとなるが、電気で飛ぶ水上飛行機に改造することで、5分の2程度に抑えることが可能だとプレゼンしていた。

決勝では参加者のビジネスモデルに対し、採算性や持続性、矛盾点などについて厳しく質問した上で審査するようにしている。彼らの提案にこちらも真剣勝負で応えなければならないと考えるからだ。

エントリーした全ての高校生たちには「高校生みんなの夢AWARD4全国大会エントリー証明書」が発行される。証明書が大学の総合型選抜(旧AO入試)で評価採用されており、この点はとても良い流れだ。起業家の裾野を広げるという意味でも、今後はさらに多くのエントリーを集めていきたい。

ワタミのビジネスモデルは、循環型6次産業ワタミモデルだ。その象徴ともいえる「牛乳そのままアイス」のキャンペーンをワタミの外食店舗で展開したところ、2週間で4万個を完売した。

地球にやさしい循環型の放牧酪農で育てたワタミファーム美幌峠牧場の乳牛から生み出されたグラスフェッドミルクを100%使用した商品だ。当初は3カ月の期間限定で販売する予定だったが、あっという間に完売となった。日本の外食チェーンでこのアイスを提供できるのはワタミだけだ。

最近「圧倒的差別化」について、社員によく指示をする。円安やインフレに対して、生き残るのは他とは違う「価値」を提供していることだ。岸田政権も、円安には為替介入、インフレには補助金を出すだけが仕事ではない。起業家を育成し、税収を増やし、日本経済を成長させるという視点を持ってほしい。

ワタミはそのモデル作りを続けたい。



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より