ニッポン放送のラジオ番組で、朝日新聞編集委員、原真人氏と対談した。異次元の金融緩和を批判し続け、「日銀に一番嫌われている新聞記者」とも呼ばれる人物だ。

 

原氏は、著書『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)で、日銀と旧日本軍の驚くほどの相似点をまとめている。2013年4月に黒田東彦氏が始めた異次元の金融緩和は、真珠湾攻撃だと例えている。真珠湾攻撃はそもそも、奇襲により短期決戦で講和に持ち込もうと立案された作戦だ。

 

異次元緩和もサプライズで打ち出し、緒戦で効果を得ようという狙いだった。物価上昇率「2%」を「2年」で達成するといっていたが、その作戦は失敗した。にも関わらず、黒田氏は戦いを続けた。追加緩和は、ミッドウェー海戦。マイナス金利はインパール作戦と、ドロ沼の戦いを続け、いまなお出口はない。日本はまもなく、〝第2の敗戦〟を迎えるというのが原氏の指摘だ。

 

現在の日本が抱えている借金の増え方は、戦前・戦中と酷似し、対GDP比の債務残高は、終戦時の200%と同水準に達している。敗戦後は、強烈なハイパーインフレが国民を苦しめた。「今はあのときと同じような財政破綻のリスクのマグマがたまっている状態」と原氏は警告している。

 

私は仮に財政破綻をしても勤勉な日本人は復活すると、確信している。しかし、終戦時の日本の平均年齢は20代。今の平均年齢は50代で、再興のエネルギーがあるか、そこが心配だと原氏は指摘していた。

 

原氏はさらに新著『アベノミクスは何を殺したか 日本の知性13人との闘論』(朝日新書)で、アベノミクスの失敗についても総括している。私は、アベノミクスの3本目の矢、民間投資の喚起による経済成長を実現したく、参議院議員となった。しかし、経済成長には賛成だか、業界団体の票に影響する規制緩和には反対という総論賛成各論反対を目の当たりにした。

 

異次元緩和は奇襲として短期間でやめ、成長戦略に本気で取り組むべきだったと悔やまれる。いずれにしろ、日銀がお金を刷り続ければ、円の価値は薄まるという原理原則の通り、今後、円安・インフレは避けられない。

 

そうした中、ワタミは10日に決算を発表した。2024年3月期第1四半期(4―6月)の連結経常利益は前年同期比62・8%増の20・4億円に拡大。4―9月(上期)の同利益を従来予想の7億円から21億に3・0倍上方修正する好決算となった。

 

祖業「居酒屋」が想定以上に回復し、利益に貢献したことはうれしい。さらに手元資金をなるべく「ドル」にしており、その為替差益も大きく寄与した。次の一手としては、インバウンドや海外事業など、円安に対応した経営戦略に力を入れる。

 

日銀も旧日本軍も、国民を勝てない戦いに巻き込んだ責任は大きい。ワタミの経営は奇襲、奇策でなく原理原則を貫いていきたい。

 

 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より