渡邉美樹より、今週のメールマガジンをお届けします。

ワタミが支援する公益財団法人「スクール・エイド・ジャパン(SAJ)」のカンボジアの孤児院が、開設から15周年を迎え、現地で開かれた記念式典に出席した。

孤児院には現在、82人の子供たちが生活している。これまでの卒業生は100人。合わせて182人の人生に関わったことになる。私にとっては、自分の子供と一緒だ。現地から送られてくる日報も欠かさず読むようにしている。

プノンペンは高層ビルが立ち並ぶ大都市へと発展したが、地方を中心にカンボジアには10万人以上の孤児院が必要な子がいるといわれている。180人は「焼け石に水」の数だ。しかし、この180人は、もしうちの孤児院がなければ、学校にも行けず、ゴミ捨て場で物を拾ったり、強制労働を強いられていた。そう考えると「焼け石に水」でも、深い意義がある。

孤児院では、子供たちが自分の夢を実現するために、勉強し、努力で人生を切り開くよう、夢教育をしている。夢をかなえた報告を聞くとうれしい。ある卒業生の女の子は、猛勉強して念願の看護師となり、現在は、小児がんの病棟で仕事をしている。年間100人の子供が入院し、その内50人は亡くなるという過酷な命の現場で、懸命に子供たちに寄り添っていると聞き、胸が熱くなった。優しく、責任感の強い立派な子に育ってくれた。

孤児院の卒業生の結婚、出産報告も増えてきた。卒業生同士のカップルも2組誕生した。孤児院があったからこそ生まれた奇跡の愛に感動する。

SAJでは月100米ドルの里親制度がある。1人の子に1人の里親(サポーター)が付く仕組みだ。中小企業の経営者をはじめ、里親の輪も広がってきた。今回、孤児院を管轄する社会福祉局と話し合い、定員を100人まで増やすと決めた。里親制度に関心のある方はぜひホームページで検索していただきたい。

現地では植野篤志駐カンボジア大使と、日本大使館で意見交換した。高級車のディーラーが急速に増えていて、この国に暮らす人々には高級車に乗りたいという、強い欲があるという。そうした欲がエネルギーとなって、経済成長へとつながっている一面がある。

「車を持ちたい」「マイホームがほしい」と、勤勉にがむしゃらに働いた昭和の人たちと一緒だ。しかし、最近の日本では「維持費がかかるからカーシェアリングでいい」と車離れが進んでいるように、かつての情熱は失われてしまった。

「欲の力は社会を変える」は、私の持論だ。「お金がほしい」「車がほしい」といった、その欲を成功への原動力にする。ただし、成功を続けるためには欲望をコントロールすることも必要だ。自分のためだけではなく、人のためになる欲望を持つことが重要だ。

月100万円の「調査研究広報滞在費」の使い道の公開すら嫌がる国会議員にも、欲望をコントロールしてほしいものだ。



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より