理事長兼校長を務めている「郁文館夢学園」には、私が担任をつとめる、「iP class」がある。このクラスでは、その日の日経新聞の記事を教材にして授業を行っている。

例えば先日は、マレーシアのマハティール元首相が、日経フォーラムで「国連に代わる機関が必要」と提言した記事を取り上げた。マレーシアの経済を大きく成長させた人物だが、現役を引退後、しがらみなく世界に正論が言える立場だ。

国連やG7などの枠組みを変え、どの国も拒否権を持たない新たな世界政府を作ることを望むというのがマハティール氏の主張だ。ウクライナ侵攻でも、ロシアが拒否権を持つ以上、国連は事実上機能していない。

授業ではこの記事に対して生徒たちに、世界の平和や安定のために必要なことを問い「自分の考え」を求める。「新聞離れ」とも言われるが、中学高校の早い時期から、政治や経済について新聞から問題点を読み解く力を養うことは重要だ。クラスの立ち上げから3年目を迎え、生徒たちの反応を見ても、するどい質問や意見も多くなり、手応えを感じている。

英国の「THE世界大学ランキング」で100位以内に日本の大学が東京大学と京都大学しかランクインしていないことからも分かる通り、記憶力ばかりに頼る日本の入試スタイルでは、世界の大学に太刀打ちできない。郁文館では個性や創造力を引き出す、夢教育に力を入れており、日本の教育のモデルとしたい。

個性的といえば、ニッポン放送の番組で、年間1000軒の食べ歩きをするグルメエンターテイナー、フォーリンデブはっしー氏と対談した。彼は、これまでの人生で食べ歩きに1万時間以上を費やしてきたという。食の情報に精通しているだけでなく思考が柔軟で、物事を多面的に分析できる人物だ。

ワタミは、はっしー氏と組んで、初の本格デリバリー専門店「から揚げの革命」を今月オープンさせた。全国50店舗の「からあげの天才」のキッチンを有効活用する。

彼の発案でから揚げの衣に、ある食材をまぶした。食材は企業秘密にしておくが、独創的なアイデアで、うまみが増し、ザクザクとした食感も楽しめる。40年近く居酒屋を経営してきた私もこれはおもしろいとうなる、新しいから揚げが誕生した。ぜひ、ウーバーイーツなどで「はっしー」と検索して食べていただきたい。

コロナ禍のブームに乗っただけのデリバリー店舗は次から次へとつぶれている。しかし、しっかりと差別化された商品は生き残っていく。「から揚げの革命」はオープンから注文が殺到し好調な滑りだしを見せている。

差別化は強みだ。日本人は長年「勤勉」が差別化だった。その強みが失われつつあることを危惧する。



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より