アメリカの外食産業の現状をこの目で確認するため、カリフォルニア州ロサンゼルスとテキサス州ヒューストンを1週間かけてめぐり、カジュアルレストランやファストフード、焼肉チェーン店を視察してきた。

アメリカは私に外食産業のすばらしさを教えてくれた国である。すべての始まりは22歳のときにニューヨークのライブハウスを訪れたのがきっかけだった。24歳で起業し、30代になって会社が安定したのを機に、毎年のように視察して単価やトレンドなど、アメリカの外食事情を研究してきた。

コロナ禍があり2019年8月以来の訪米だったが、肌で感じたのは、インフレの進行だ。これまで5ドルだった朝食は7・5ドル、8ドルだったランチは12ドル、20ドルだったディナーは30ドルというように外食における価格が大きく上昇していた。

しかしアメリカ人はインフレや物価高に対して怒ってはいない。労働者の賃金も上昇しているからだ。ファストフード店のアルバイトでも時給は日本円にしておよそ3000円。日銀が物価高やインフレをコントロールできず、賃金も上がっていない日本とは大きく状況が違う。

もう1つ、繁盛している勝ち組飲食店と、客足が遠のいた負け組飲食店の差も大きく開いていた。勝ち組は、素材を見直して商品のレベルを上げるなど、上がった価格に応じた価値をしっかりと提供している。スタッフの接客サービスが優れていること、また店内が清潔に保たれているというのも大前提だ。

対して、負け組は物価高に対して単純値上げをしているだけで、利用者が何かしら価格以上の満足度を得られるような努力をしていない。原料価格の高騰に見舞われている日本の多くの飲食店も同じだ。このままいけば、日本でも勝ち組と負け組の差が明確になっていくだろう。

ゴールデンウイークが明けて、8日から新型コロナウイルスの感染法上の分類が「2類相当」から、季節性インフルエンザと同じ「5類」へと引き下げられた。行動制限のない「アフターコロナ」の時代に本格的に突入した。ワタミでは、これを「商機」として、全社一丸のキャンペーン攻勢を仕掛ける。

居酒屋「ミライザカ」では24日まで、「宴会コース」のお肉を2倍のボリュームで提供する。「鳥メロ」ではハイボール、サワーの「280円祭り」、「焼き肉の和民」では、ビールやハイボールなどドリンクメニュー全品199円で提供する「みんなでカンパイ!ALL199スペシャル」を実施している。

おかげさまで、外食事業が計画比100%を超えてきた。社内には、今こそ120%を目指そうと激を飛ばす。どんなときも、現状に満足せず、さらなる高みを目指す。20代、アメリカに魅了され東京・高円寺で1軒の居酒屋を始めたときから、そのスピリッツは変わらない。いつの時代も、それが勝ち組に求められる何よりの姿勢だろう。樹)



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より