『日本が侵攻される日』(幻冬舎新書)という本を出版した「ヒゲの隊長」こと参院議員の佐藤正久さんとニッポン放送の番組で対談した。私も参院議員時代に外交防衛委員長を務めていた際は、元自衛官の佐藤さんの意見は、現場を知る声だと参考にしていた。

佐藤さんは中国が台湾を攻める可能性は高いと見ている。地図を片手に台湾海峡の浅さを強調し、「中国は正面から潜水艦を展開できない。大きな海軍力を使うには東側からになる。だから中国は現在、台湾の東側で訓練を繰り返している。台湾東側の海域には石垣島、宮古島なども含まれ、有事では主戦場になる」。つまり、日本が巻き込まれるということだ。

では、中国はいつ攻めるのか。佐藤さんは、早ければ来年と予想する。台湾では総統選、米国では大統領選があり、国論が割れるおそれがある。特に米国は分断が進んで混乱が深まれば、逆に習近平主席のチャンスは広がる。遅くても2027年、習主席4期目入りの前には台湾統一の実績を強調するはずだと見ていた。

台湾侵攻が現実となったとき、日本は中国に対して経済制裁できるかも問題だ。日本経済は中国依存度が高く、制裁をする側の日本も受けるダメージが大きい。しかし、佐藤さんは国家が重視すべき要素に「価値観」「経済」「安全保障」の3つをあげ「価値観に軸足を置かないと日本は生き残れない」と強調していた。同感だ。

ウクライナを侵攻したロシアに対して、日本は経済制裁に加わった。しかし中国の台湾侵攻では「損するから」と制裁に参加しなければ、国際社会から「所詮はその程度か」とみられ、いざというときに助けてもらえなくなる。佐藤さんは、日本は世界79カ国の調査で「自国のために戦うか」という国民意識が最下位だと指摘し、戦争回避の抑止力は、世界各国との協調姿勢が何よりだと説く。

中国との国交がなくなっても経済が守れるかということを考え、手を打っておくことも重要だ。ワタミでは中国撤退ラインをはじめから損失30億円と決めておく「ワタミ流チャイナリスク」というルールがある。おかげで、コロナ禍では他の外食企業よりも圧倒的に中国損失が少なかった。

中国市場は今後も有望であることは間違いない。薩摩牛食べ放題「かみむら牧場」が現在、香港、台湾で好調で今後は中国本土への進出を視野に入れる。しかし現地の外食企業と合弁の形で再進出したい。最大の問題は政治体制にある。現状では当局が「明日、日本企業はこの場所から出ていけ」と言い出せば、したがわざるをえない。現在の政治体制が続く限り、このリスクを意識し続けなければならない。

最後に、私は防衛費の財源に赤字国債を充てることは反対だ。太平洋戦争の戦時国債と同じく歯止めが利かなくなりハイパーインフレを引き起こす危険が高い。国を守るためには政治が、歳出改革や財政再建を行えるかにもかかっている。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より