今年の日本経済を一言でまとめるなら「厳しい」となる。円高と円安の乱高下が続き、賃金は上がらず、一方で物価は上がっていく。外食業も業績がコロナ前の70~75%で変わらないだろう。中小の飲食店はいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済も本格的に始まる。つまり、いい話はない。

事実上の利上げに踏み切った日銀も「追い詰められたな」というのが感想だ。新総裁になっても何もやりようがないだろう。私は国会議員時代に日銀に対して「出口戦略はどうするのか」と質問し続けた。出口とは、日銀以外が国債を買ってくれる状況を作ることである。今の状況では、10年物国債の利回りを0・5%にしても買ってくれる人はいない。これ以上金利を上げれば日銀は債務超過となり円は信頼を失う可能性が高い。

為替に関しては、どう考えても中長期では、円高にはならないだろう。世界はもうばらまいたお金の回収の局面に入っているのに、日本だけがお金をまだ、どんどんばらまいている。相対的に通貨の価値が下がる「円安」は避けられない。今年は1ドル115円から155円のレンジ内を見込むが、この先2、3年では1ドル200円から300円になるという見通しを変えるつもりはない。

本来は財政再建に取り組むべきなのに、岸田政権は唐突に「異次元の少子化対策」を打ち出した。昨年、防衛費の財源が足りないから歳出改革や、増税を打ち出したばかりだ。その財源の件が片付いていないのに、さらにまた大きな問題を持ち出した。統一地方選前の人気取りとしか思いない。

少子化対策といえば、東京都が18歳以下に所得制限なしで月5000円を給付することにした。月5000円もらえるからといって、子供を産もうと思う人がどれだけいるのだろうか。私は以前から3人目以降の子供には1000万円を支給すべきだと主張してきた。今でも無駄を省けば原資は捻出できる。その3人以上の子供たちが将来、働いて納税してくれればGDPで見ても元がとれる。税金の投資対効果とは本来こういう政策だ。

ワタミでは今年のテーマに「耐える」を掲げ、内なる充実、改革に徹する。これまで、こうした消極的なテーマを掲げたことはないが、若い時よりも、冷静に経済や会社を俯瞰して見るようになった証しだ。ここは「耐える局面」だ。各事業、何があっても潰れない強い体質を作り、今までやってきたことを深く掘り下げる一年としたい。

今年に続く2024年には日銀の債務超過をきっかけとした財政破綻や、中国の台湾進攻など大きな変化があってもおかしくない。ワタミ本社近くの東京・羽田神社で引いたおみくじにも偶然「今年は根を張る年。美しい花を咲かすには土台が必要」と書いてあった。人気取りの政策が並ぶ日本の政治も、根っ子から変えるべきに思う。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より