菅義偉前首相とニッポン放送の番組の年末年始スペシャル(12月31日と1月7日放送)で対談した。今年9月の安倍晋三元総理の国葬儀では、菅前首相の弔辞に多くの国民が胸を打たれた。「友人代表は菅さんにお願いしたい」と昭恵夫人の希望だったことを明かしてくださった。

岸田文雄政権の支持率が落ち込んでいることについて質問すると、支持率がすべてではないと前置きした上で「選挙で公約したことをひとつひとつ実現していくことが大事だと思う」と語っていた。そういう面では、今回の増税は選挙で国民と約束していない。防衛費もいきなり「43兆円」と金額ありきだ。何にいくら必要という国民への説明がまずは先だと私は思う。

岸田政権は、防衛費の財源に法人税の増税を検討している。菅前首相は「安倍政権では、法人税を引き下げ、結果、法人税の税収も増えた」と成果を述べていた。私も当時、参議院議員でこの政策を推進した。世界と比べ日本の法人税をまた高くすることは、日本企業や日本経済にとってマイナスだと感じる。

私は、菅政権時から復興庁の復興推進委員を務めているが、復興税の一部を防衛費に充てることには、違和感しかない。菅前首相も「感情的には、圧倒的にそういう人が多い」といい、増税に関しては「具体的なことは、まだこれから。納得をもらえるのは、なかなか簡単ではない」と話していた。さらに、岸田政権は30億円以上の所得への課税を強化する方針だ。私は、愚策だと思う。

対象者は200~300人しかいない。上場企業の経営者など、雇用と納税に大きく影響を与える人材が、ますます海外に流出する。シンガポールは、相続税やキャピタルゲインへの課税をゼロにし、岸田政権と真逆の政策で、世界から優秀な人材を呼び込んでいる。菅前首相も「(日本で成功した経営者で)シンガポールに行ってらっしゃる方は何人もいますよね」と国益損失の問題点を認識されていた。

菅政権は携帯電話料金の値下げで、寡占企業の既得権に切り込み、家計に大きな恩恵を与えた。不妊治療の保険適用では、子供は欲しいが治療費が高額で、多くの人が悩んでいた問題を一気に解決した。菅前首相もこの政策にSNSで「50万のいいね」がついたと反響に驚いていた。

この一年、そうした国民が本当に感謝する政策はあっただろうか。議員時代の同僚からは、岸田政権は来年5月の広島G7サミットまでもたないのでは、という見通しも聞く。菅前首相の「再登板」を期待する声も多く、自民党内で支持する議員が90人ぐらいに達するのではという情報もある。私も期待をする。

ワタミの1年を振り返ると、全社員一丸でスピード感を持って、あらゆる改革を行った。コロナ後初の営業黒字はひとつの成果だった。政治にも来年は「目に見える成果」を期待したい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より