ニッポン放送の番組で先日、広島県安芸高田市の石丸伸二市長と対談した。市議会の定数半減を提案し、議会で「恥を知れ!」と訴えたことで話題となった40歳の青年市長だ。

三菱UFJ銀行出身の石丸市長は、銀行員を続けていた方が収入も安定性も高かった。「待遇の面では正直割に合わないと思うが、(市政について)『どうしてもやらなければならない』と思った」と語る。民間から政治への転身、同じ道を経験した者として、心から応援したい。

市長は就任早々、議会の居眠りを批判した。当然の指摘だが、議員たちの反感を買った。市長が、市政改革の一環で副市長を公募し、議会に提案したが、財政難を理由に否決された。それではと、市長も同じく財政難を理由に議会の定数半減を提案したが否決された。

財政再建のための歳出削減という総論は賛成、しかし自分たちの議席は減らしたくないという各論では反対する。政治家による改革が進まない「総論賛成各論反対」の象徴だ。

国政でも、小選挙区の「10増10減」で改革は進まない。少子高齢化で人口が減る中、議員定数の削減は、本来踏み込むべき改革だ。

解決策は、議員定数削減を公約に掲げる「本物の政治家」を有権者が当選させるしかない。私が理事長を務める郁文館夢学園ではオーストラリアやニュージーランドに留学生を出している。現地で、地元市議と面会する機会もあるが、みんな手弁当だったことに驚いた。地方議員は本来こうあるべきだと思った。日本の地方議員がいかに手厚いか。私はせめて、地方議員は日当制でいいと考える。

石丸市長は、財政の問題にも言及し「多くの自治体も同様だが、約40年前に箱モノ(公共建築物)を作りまくっている。一斉に更新時期を迎えるので20年後は、今のままだと持たない」。そのうえで、「無理無駄を徹底的に排除する。おそらく企業の経営では基本の『き』だが、地方自治体ではそれが進まない」と難しさを話す。政治に経営の常識を持ち込む難しさは、私も散々経験した。

しかし、このままでは近い将来、多くの市町村が破綻するだろう。今後、財源の地方交付税や市民税が増えることも考えにくい。市長の議員削減提案は、日本全体の地方財政をどうするのかという重要な問題提起だ。政治もPDCA(計画、実行、評価、改善)を繰り返し、課題を解決すべきだ。

ワタミも下期がはじまった。企業としてはあたり前の「予算達成」に一丸となる。毎週月曜日の戦略会議で、計画、実行、評価、改善を繰り返す。経営は徹底したPDCAの繰り返しだ。秋の臨時国会もはじまったが、予算委員会は「国家の経営会議」であってほしい。旧統一教会問題の追及に時間が割かれる間にも「財政赤字」と「国の借金」は拡大していく。

今の日本に「議員の数を削減する」、そんな信念の提案をする政治家はいるのだろうか。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より