明日(5日)に誕生日を迎え、63歳になる。私は常に「29年・6年・29年」で自分の経営者人生を意識している。ワタミを創業し、経営者を29年間、参議院議員を6年間経験した。ワタミに経営復帰して今、4年目。あと25年、88歳まで現役経営者宣言をしている。

同級生の大半は定年退職を迎えている。しかし、定年後も、起業すれば「大きな夢」に挑戦することもできる。88歳まで現役経営者宣言は、同世代の一つの目安になりたい。

前半29年の経営者人生を振り返ると、一番大きな転機は、創業から12年後、1996年の店頭公開だった。これを境に東証2部、1部と駆け上がり、1000億円企業へと成長した。後半29年の経営者人生の一番大きな転機は、今後、日本に訪れる財政破綻と、ハイパーインフレだと見込む。緊張感をもって、その難局を乗り切り、1兆円企業へと飛躍させていきたい。

ワタミは他の外食企業と異なり循環型6次産業「ワタミモデル」という独自の経営モデルを構築してきた。その中でも1次産業である、日本最大級の有機農業法人「ワタミファーム」の存在は大きい。円安、気候変動、食料自給率などで、今後日本の農業には未来がある。

近頃、後継者について周囲に聞かれる機会が増えた。築き上げてきた「ワタミモデル」を世界に広げられるグローバルな視点を持ち、「何のためにワタミモデルを作ったのか」という理念を理解し、すべての事業を熟知する経営力が求められる。最後には時勢と状況に合わせ、変化に対応できる人が条件になる。

値上げラッシュの中、ワタミの宅食で「価格維持宣言」を発表し、テレビショッピングも新バージョンを収録した。価格を変えることに甘んじれば一向に知恵は出ない。「価格を上げない」と宣言し、変数を固定化してこそ枠内で「創意工夫」が生まれる。「ここまでにやる」と決めてこそ計画を工夫できる「夢に日付を」と一緒の発想だ。

コロナ禍で「なんとなく」の飲み会は減少し、目的をもった客が来店するとみて、ワタミも焼肉など専門店を重視した。ただ、物価高を受け、再び総合居酒屋が復活するのではないかと最近考えが変わってきた。

専門店の場合、材料費の高騰は直接、あおりを受け、客単価に影響を与える。一方で、居酒屋ならば豚肉が高騰すれば、鶏肉への代替が利くなど単価を変えずに済む。総合的に創意工夫ができることが総合居酒屋の強みだ。

本来は、膨らみ続ける国の予算こそ、歳出という変数を固定して、財政再建のため、創意工夫をするべきだ。大衆迎合政治のままでは、財政破綻は必ず来る。未来を思い、提言を続けるこのコラムも88歳まで続ければ、1000回になる計算だ。ワタミもその頃は、大きく姿を変えていることだろう。寧静致遠(ねいせいちえん)。「一歩ずつ遠くの目標に歩む」。それが私の好きな生き方だ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より