政府が22日に為替介入を実施した。145円超えという「高熱」に対して、為替介入という「薬」を飲み、一時的に症状を緩和した形だが、日本の経済財政の「病」は本質的に何も解決していない。政府は今月、物価高対策で住民税非課税世帯に1世帯当たり5万円を給付するなどの対策をまとめたが、こうした問題はしっかり国会で審議すべきだ。

私のニッポン放送のラジオ番組にも子育て世代のリスナーから「資産家の義父は5万円もらえ、私たちはもらえない」との不満の声が寄せられた。住民税を基準とすれば、資産家も含まれてしまう。

本来は、マイナンバーカードなどを活用して資産を把握した上で、本当に困窮する世帯に給付すべきだ。今回の5万円給付は一時的であり愚策だ。ガソリン補助金の年末までの延長や、小麦の受渡価格でも税金を使っている。これも一時的に価格を抑えるだけで、出口がない政策が目立つ。

14日の国債市場では、長期金利の指標である新発10年債の利回りが、一時0・250%を付けた。日銀が上限とする「0・25%程度」の水準となった。

インフレは、本来は痛みをともなっても、金利を上げるのが正しい治療法だ。政府も日銀もそれをしない、正確にはできない。金利を押さえ込みながら、為替介入をし、補助金を出す、政府は完全に行き詰まったかにみえる。

しかし、来月3日から国会が始まっても、野党は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)などを争点にしてくるだろう。本来は財政経済を一番の争点にすべきだ。

円安は欠点も多い一方、日本の農業にとっては本来追い風だ。外国産と価格面で戦えるようになり、輸出によってさらに収益を増やすチャンスでもある。何より国内産は、高品質であり世界と戦える。今こそ輸出に強い農業を「オール・ジャパン」で支援するときだ。

サラリーマンが農業従事者に転向できるような仕組み作りや、民間企業がもっと農業に参入しやすいように「税と法律」で誘導すべきだ。アベノミクスが掲げた農業分野の規制緩和も、もう一度進めるべきだ。

ワタミも日本最大規模の有機農業「ワタミファーム」を展開している。外国産野菜が高騰するなか、自社農場の有機野菜は大きな武器になる。今後は農業や、インバウンドに力を入れた経営を加速する。円安で有利になることを、一企業でも思いつくのだから、国であれば、もっと大きなことができる。

本日、安倍晋三元首相の国葬が執り行われたが、安倍元首相が民主党から政権を奪還した時「日本は変わる」と誰もが期待した。一時的な政策が並ぶ、岸田文雄政権で「日本が変わる」と今どれだけの国民が期待しているだろうか。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より