敬老の日を前に16日、「ワタミの宅食」の新事業「みまもりサービス」の発表会見を行った。

宅食は、全国約7500人の配達スタッフが高齢者にお弁当を届けている。高齢者独居世帯は740万世帯を超え社会課題だ。近所に家族や親戚がいない場合、万一の時、心配だという高齢者が多い。子供側も、離れて暮らす高齢の親のことが心配だ。独居の高齢者に、1日1回声をかけ、見守ってくれる人がいるというのは大きな存在だ。

ワタミの宅食はそこを担う。新サービスでは、お弁当の配達時に元気な姿が確認できれば、それを家族にメールで伝える。不在や応答がない場合、3時間以内に連絡し、それでも連絡がとれない場合に「3時間たっても連絡とれない」旨を伝える。

専用アプリと24時間対応のコールセンターも新設し、1日弁当代にプラス150円(税込み)で「みまもりサービス」を実施する。翌日も配達した弁当が残っていた場合などは、これまで通り無償でも、家族や、警察、自治体に当然連絡する。

ある新聞の投書欄で、高齢の一人住まいが入浴中に転倒し、一晩中、浴室にいて、翌日訪ねてきた近所の人に叫んで助けられたという記事があった。「孤独と不安」を切実に訴える内容だった。警備会社のサービスは、非常ボタンを押す仕組みだ。

しかし、高齢者の家の中の事故で一番多いのは転倒だ。転倒し起き上がれない場合、ボタンを押せない。誰かが見つけてくれて、はじめて安心が成立する。カメラで室内を監視する見守りサービスもあるがプライバシーからそれは嫌う人が多い。アナログだがワタミの宅食の「声がけ」の見守りはニーズがある。

これまでも年間100件以上、配達スタッフが、転倒や体調の急変を見つけ、命を救ってきた。警察や自治体から多くの感謝状ももらい、全国300以上の自治体と見守り協定も結んでいる。見守るのがいつも同じ、顔見知りの専属配達スタッフというのが、安心の強みでもある。

会見では、食料品をはじめ物の値段が上がる中、ワタミの宅食は来年の3月末までは値上げはしないと「価格維持宣言」をした。お客さまの8割が年金受給者だ。物価高でも年金受給額は上がらない。「いつ値上げするのか」とよく聞かれるようになり、安心してほしいという思いで宣言をした。

今回改めて、スーパーで買い物をするのに比べて、宅食が経済的だということにも注目してもらいたい。栄養バランスに配慮した献立は食生活の軸にもなる。

「健康と安心を届ける」これが、これからのワタミの宅食のキャッチコピーだ。

政府が、高齢者世帯を中心に一律5万円を配っても大きな不安が解決されるわけでない。1日1回、必ず声をかけに来ますという、孤独への寄り添いには、優しさという価値がある。「お母さま、今日も元気でした」と安心を伝えるメールは、親子にしかわからない幸せの価値がある。ワタミはそんな「新しい価値」で、ありがとうを集めていきたい。 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より