感染症学の専門家で、白鴎大学教授の岡田晴恵さんとニッポン放送で対談した。政府分科会の尾身茂会長らと異なる見解も多く、『秘闘 私のコロナ戦争全記録』に記している。岡田さんは、感染症は「早期検査」「早期診断」「早期治療開始」が肝要なのに、これまでのコロナ対策を「後手」だと批判する。

尾身会長らが繰り返した、飲食店への営業自粛も、効果が不明確で、家庭内感染が主流になってからも、飲食店規制を主軸にしていた対策はナンセンスだという。

これだけ感染が拡大したら「医療を強くするしかない」と主張されている。「仮設でもいいから、公園などにコロナ専用病院を作ればいい」と、私も繰り返し提言している。岡田さんは一時、厚生労働相や、東京都知事がその方向を検討したが、ウイルスの流行がいったん落ち着くと、その話は立ち消えたという。 

しかし結局、第6波を超える第7波が到来している。「先手」で準備をするというイマジネーションが足りないと指摘する。検査キットもコロナの治療薬も今、足りていない。もし準備して使わなかったときの失敗を官僚は恐れる。

だからこそ、政治がリスクをとるべきだ。独立した判断が求められる政府専門家も官僚の既定路線に沿った提言をしているかにみえる。少なくとも岡田さんのような異なる意見にも耳を傾け、正論なら採用すべきだ。

「2類相当」から「5類」へも、安易に引き下げると今より混乱すると予想していた。すべての病院でPCR検査や診察できることが重要だが、嫌がる病院経営者も出てくる。治療薬も高額であり、かかっても病院に行かない人も増えるかもしれない。そのへんは政治が解決すべきだ。

特に懸念するのは、この冬の第8波だ。「オーストラリアでは今、インフルエンザとコロナがダブル流行している」と岡田さんは警告する。

これまで、オーストラリアなど南半球の夏の感染状況が、半年後北半球にあらわれる経験則がある。日本でも「(インフルが)2シーズン流行していないので、基礎免疫が落ちている」と指摘する。コロナとインフルが同時流行したときの医療体制はさらに深刻になる。今こそ政治が準備すべきだ。夏休みのゴルフウェアー姿の岸田文雄首相からは「先手」の準備が進んでいるとは感じられない。

ワタミは自治体と連携しコロナ療養者への配食サービスのお手伝いをさせていただいている。その配食数を見ると今どれだけの人が自宅で不安な日々を過ごしているか胸が痛む。

2年半たった今でも医療崩壊が起きており「日本の対策は敗北」という岡田さんの言葉には同意だ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より