新型コロナウイルスの感染者数が過去最高を記録し、政府は「BA・5対策強化宣言」を新設した。しかし、これまでの注意喚起と内容は同じで、効果もあいまいで、この宣言で医療と経済が両立するわけがない。「やっている感」に過ぎない。責任も各都道府県にして押し付けている感がある。

外食業界として声を大にしたいのは、この宣言が出るだけで、補償もないのに、飲食店の客足や売り上げが大きく下がることだ。駅前の居酒屋など、すでにかなりの影響を受けている。高齢者に「外出自粛を要請」をしている以上、経済的影響は出るに決まっている。大企業や官公庁はこの宣言で、会食や宴会を自粛する。しかし、感染者数が減るわけでもない。まさに〝最悪の宣言〟だ。

岸田文雄政権が誕生してまもなく1年になる。本来なら1年あれば様々な準備ができたはずだ。抗原検査キットの不足など、準備不足以外の何ものでもない。菅義偉前政権がモデルナやファイザーと交渉しワクチンを確保し、大規模接種会場や、職域接種など、1日100万回接種を実現したような気迫が感じられない。

感染症法上の位置づけについて、「2類相当」から「5類」への引き下げの検討も賛成だが、準備が進んでいるとは思えない。通常診療に支障が出るため、発熱外来の患者を引き受けたがらない病院が多い。感染爆発は今後も起こるだろう。

医療のひっ迫を根本から解決するために、公園や競技場等に大規模な発熱外来やコロナ専用の仮設病院をつくり、医師や研修医等をやりくりするなど、とにかく「これまでやっていない」大胆な政策を投入すべきだ。少なくとも「このままでいい」とは誰もが思っていない。

飲食業に加えて、岩手県陸前高田市の「ワタミオーガニックランド」では観光業としてもダメージを受けている。そうした中でも、感染対策を万全に取ったうえで、小学4~6年生を対象とした体験学習「わたみ自然学校」を実施した。今年で24回目の活動で、もともとは北海道ではじめ、今年から陸前高田で行うこととした。

有機農業を手掛けるワタミとして、都会の子供たちに自然や農業と触れ合いながら、生活習慣や人間関係など、人生にとって大切なことが学べることを目的としている。旅費宿泊費の約半分をワタミが負担している。自然学校では最後には夢の作文を書き「夢を持つことで現実を変えていく」ことを教える。

3泊4日で、子供たちは驚くほど変わり、成長する。それを見るのが幸せだ。この自然学校で「人生が変わった」と、先日も元参加者の子がそう言ってくれた。

現在、政府の復興推進委員も務めているが、本気の復興を目指すなら被災地で法人税減税や出資優遇などの政策を実施しなければならない。「100億円ファンド」の創設も提案したが、いまだ反応はない。感染対策も復興も「やっている感」では現実は変わらない。「3日あれば人は変われる」。夏休みの子供たちだけなく、政治家にも伝えたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より