ワタミの主力居酒屋「鳥メロ」では首都圏6店舗を皮切りに順次、グランドメニューを変更する。今回から330円(税込)のお通しをやめ、その代わりに198円(同)のスピードメニューを充実させた。

焼鳥や串揚げのメニューも充実させ「専門居酒屋」に負けない質と価格を意識した。うなぎやアボカドなど、変わり種の「寿司」も用意するなど楽しさ感も演出した。

収益のウエートを占めていたお通しを廃止するのはチェーン居酒屋の常識から見れば「革命」だろう。しかし今後、インバウンド(訪日外国人)の集客を見据える上で、頼んでもないものが出されお金がとられる、お通しの文化は理解されない。「お通しがないと利益面で厳しい」と社内から相当の反対意見も挙がった。しかし、お客さま目線で考えるべきだ。

物価高で財布のひもはより厳しくなる。1000円、2000円を居酒屋で使っていただくことに、より丁寧に向き合う「時代の変化」が必要だ。考え抜いた今回の決断は、トップダウンでなければ不可能だったと思う。

高円寺にある「ワタミ創業1号店」は今や「鳥メロ」になっている。久しぶりに足を運び、懐かしさが込み上げた。当時は「何とかお客さんを増やせないか」「どうにかして2号店の出店資金を作れないか」と寝ても覚めても考えていた。追い詰められてこそ、道が開けた。先日も予算が達成できないワタミの若い事業本部長に、考えに考えて、追い詰められてからこそ、本物のアイデアは浮かぶと励ました。

こうした中で、新型コロナウイルスの感染「第7波」で国内の新規感染者は20万人超となった。ワタミの居酒屋も客足がコロナ前の70%程度に戻りつつあったが、感染拡大とともに影響が出始めて、10%以上落ちてきた。

フランチャイズオーナーとも話したが、中小の飲食店はコロナ融資の返済も始まっており、資金繰りもギリギリの所が多い。ここでかじ取りを間違うと閉店、倒産が加速する。大手も外食企業は人員不足が深刻だが、この局面では先も読めず、採用の計画も悩みの種だ。

岸田文雄政権は世論の調査の声で、政策を決定している感がある。行動制限を実施した方がよいという声が過半数を占めたあたりで、政策を転換してくるのではないかと感じる。

もし、行動制限をかけるならば、飲食店への補償は必須だ。ただ、これまでも飲食店だけへの行動制限で本当に効果があったのか検証を求めたい。昨年も、当時副総理兼財務相だった麻生太郎自民党副総裁が「本当にそれ(=行動制限)が必要で効果があったのか」と疑問を呈する発言をしている。多くの国民もそう思うところがある。

私の主治医でありドイツ・ボッフム大学永代教授の南和友医師も「抗体がどれほどあるか」が重要と再三指摘する。行動制限だけでなく、抗体に主軸を置く対策を考えるべきだ。参議院選挙も終わり政治は夏休み感がある。感染と社会経済活動の両立。今こそ、考えに考え抜くときだ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より