3年ぶりに国内のワタミ全社員を集めパシフィコ横浜で「全体会議」と「創業記念祭」を開いた。コロナ禍で多様化されたリモート会議だが、私は好まない。大事なことは直接でなければ、やはり「気」が伝わらず、全然、効果が違うと感じる。

ゴールデンウイーク後の消費の腰が弱い。ライフスタイルの変化というより、ライフマインドが変化してしまった。私の子供の頃(1960~70年代)に戻ったような感覚だ。あの時代は、外食は特別な日にするもので、平日は直帰し、家での食事が当たり前だった。

駅前型店舗はコロナ前の6割しか客足が戻らない。しかもアルコールを伴う飲食店の数は3割減ったという。アルコールを伴う外食市場は完全に縮小した。

さらに、ウクライナ情勢で原材料費や物流費が高騰している。4月の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は前年同月比2・1%増だが、企業物価指数(4月速報値)は前年比10%増となった。企業の負担が重い表れだ。

食品メーカーやスーパーなどが一斉に値上げする中、「ワタミの宅食」も値上げせざるを得ない状況だが、お客さまの多くが年金暮らしの高齢者の方であり、ギリギリまで企業努力を続けて「お弁当本体価格」を値上げせずに済む方法をあがき探す毎日だ。

長年、親しくさせていただいている「日本一の旅館」、加賀屋(石川県七尾市)相談役の小田禎彦氏と金沢でお会いした。82歳ながらも、コロナの愚痴を一つもこぼさずに新規事業を熱く語っていた。旅館業も客足は60%しか戻らないという。7~8万円の高級価格帯の戻りは比較的早いそうだが、ボリューム層の3~4万円台の価格帯である団体旅行が動かなければ観光業は回復しない。ここを、後押しする景気刺激策が重要だ。

岸田政権のマスク着用緩和も条件がゴチャゴチャしすぎている。外国人観光客の受け入れも人数制限がついており、中途半端すぎる。歯切れの悪い政策では、景気は刺激されない。官僚や政治家が、慎重で批判をおそれている保身だ。すでに飲食業も観光業も協力金なく戦っている。経済活動を制限するのはおかしい。

税金を投入する「GoToキャンペーン」も結構だが、しっかりトータルの費用対効果をあげてほしい。それよりも今こそ、円安を逆に利用してインバウンドを取り込むべきだ。外国人観光客は、外食、観光とコロナで打撃を受けた産業を何より救う。

ワタミは薩摩牛の和牛焼肉食べ放題「かみむら牧場」が好調だ。海外でのブランドPRも開始した。外国人観光客が「和牛」と検索したとき、ナンバーワンのポジションをとりにいく。岸田政権も「これは世界でナンバーワン」という、そろそろ歯切れのよい経済政策を見せてほしい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より